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松本大策のコラム
「パピローマの重症例と治療法 その2」

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2006年11月10日


 さて、パピローマの自家ワクチンの作り方ですが、牛さんからイボを切り取ります。だいたい10gくらいあれば十分でしょう。ます採取したイボをきれいに洗います。汚れていると、注射したときに化膿したりしますからね。つぎにイボをカッターナイフなどで細かく刻んで、すり鉢などですりつぶします。グニョグニョしてなかなかつぶしにくいので、目の鋭いすり鉢がいいです。別に毒ではないのですが、台所のを使うと奥さんからぶっ飛ばされることがあるので100円ショップなどで新しいものを買ってきましょう。
 すりつぶしたら0.5〜1%のホルマリン水100mlを加えてさらにすりつぶします。よーくすりつぶしたら、密閉できる瓶(ペットボトルなどでもよいです)に入れて冷蔵庫で2週間ほど「熟成」させます。ときどき瓶を振ってよくかき混ぜてください。このときにホルマリンでイボの中にいたウイルスが不活化されるのです。
 2週間ほどしたら、濾紙(コーヒーをいれるときのフィルター紙でかまいません)で濾して密閉できる瓶(このときは長期保管できるように、できれば獣医さんからペニシリンの空き瓶をもらって、注射器で吸って移すとよいでしょう)に保管します。1年位は使えます。
 こうしてできた自家ワクチンを、セリ前の子牛で10mlくらい、肥育で20〜25mlくらい皮下注射します。1ヶ月間隔位で2回注射するとたいていはパピローマ(イボ)が小さく枯れていきます。僕は心配性なので、化膿を防ぐためにペニシリンを1mlくらい混ぜて打ちます。ただし、ポジティブリストの問題もありますから、獣医さんに相談してやってもらった方がよいかも知れません。うちの診療所では、半年以内に出荷する肥育牛にはこの方法は実施しません。
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