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松本大策のコラム
ワクチンの正しい使い方 その1

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2019年3月4日

 いろいろな病気の予防のために、みなさんのところの牛さんにもいろいろなワクチンを使っていらっしゃると思います。バイ菌やウイルスによって起こる病気は、時に重大な被害をもたらします。こういった「感染症」を防ぐために、ワクチンは大変有効です。

 バイ菌は抗生物質でやっつける事ができますが、ことウイルスに対しては、牛さん自身の免疫力(特に免疫抗体という、個々の病原体に応じた檻とか手錠みたいなもの)でやっつけるしかありません。この「免疫抗体」を造るための手助けをするのがワクチンです。

 ワクチンには、病原体を殺してあるタイプ(不活化ワクチン)と、病原体を生かしたまま毒性を弱くしたタイプ(弱毒生ワクチン:生ワクと呼ぶことが多いです)があります。生ワクチンは、病原体が生きているので、長く効果(抗原性)を持続できます。ですから、基本的に一回の注射で免疫抗体を高くすることができます。

 これに対して不活化ワクチンは、病原体が死んでいるために、効果(抗原性)が長く続かないため、基本的には2~3週間間隔をあけて2回注射する必要があります。

 ワクチンの効果を少しでも長く保つために、油や金属などの物質(アジュバントと呼びます)を入れてあるものも多いです。

 これだけ見ると、不活化ワクチンよりも生ワクチンの方がいいじゃん!と思われるかも知れませんが、生ワクチンはなにぶん病原体が生きているので、それが不都合なことがあります。最も気を付けなければならないのが、BVD-MDの含まれた生ワクチンの場合、お腹に赤ちゃんがいるお母さん牛に打つと、妊娠の時期によっては、胎盤を通じてウイルスが赤ちゃんに感染し、赤ちゃん子牛が一生免疫不全かつ、ウイルスを撒き散らす存在(PI牛と呼びます)になってしまうのです。

 みなさんは、ややこしい事は避けた方が、混乱や間違いを起こさなくてすむので、「妊娠牛には生ワクチンは打たない」と覚えておいた方がいいでしょう。

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