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戸田克樹のコラム
第218話「そのお産、汚染(おせん)になっていませんか③~胎盤停滞になる理由~」

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2019年1月16日

今回はちょっと横道にそれますが、胎盤停滞がなぜ起こるのかについて考えます。
どうやら牛さんでは胎盤停滞が起こりやすいようです。その理由は牛さんの胎盤構造に隠されています。牛さんの胎盤構造については、池田先生のコラム「牛の解剖127:雌性生殖器(10)」を参照していきましょう。

イラストのように、牛さんの胎盤は圧倒的に数が多いのです。それらが次々に剥がれることで、分娩後に胎盤は排出されます。少しでも剥がれないものがあると、「いつまでも胎盤が出てこない」という状態になってしまいます。
逆に、馬さんやイヌさんでは胎盤が一続き。どこかが剥がれればペラ~っとすべて剥離され、スポン!っと出てきてくれるわけです。

教科書的には正常であれば「分娩後6~8時間程度で胎盤は排出される」と記載されています。また、「分娩後12時間経過しても胎盤が排出されない状態を胎盤停滞と診断する」とあります。お産が終わったら、少なくとも翌朝には胎盤が出たかどうかの確認が大切です。

残念ながら、胎盤停滞の明確な原因はよくわかっていません。
分娩前のストレス?セレンやビタミンイー欠乏?分娩誘起のせい?調べてみるといろいろなことが要因として挙げられています。私自身のこれまでの現場の経験ですが、栄養状態のよくない母牛、ビタミンA値やカルシウム値の低い牛さんでよく起こる印象もあります。

ビタミンAは粘膜の状態を良好に保ちますし、栄養状態が良好であればさらに細胞の動きが活発になります。古い細胞のターンオーバーを促進する効果も期待できますので、より胎盤の結合が外れやすくなる可能性があります。さらに、カルシウムは筋収縮に欠かせません。子宮平滑筋の動きをサポートしてあげれば、胎盤排泄が円滑に進んでくれるのではないでしょうか。

胎盤停滞予防を考える上でお産前の母体管理は非常に重要!
臨床の現場で胎盤停滞に出会うたびに、そんな気がしてならないのです。

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