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戸田克樹のコラム
第207話「いまごろ悩ましいハエ②」

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2018年10月24日

まず、「吸血後は草むらで休憩」に着目してみましょう。
イエバエは牛の周囲や飼槽の残飼に長時間むらがっています。一方、サシバエはヒット&アウェイ型。さっと飛びつき、チューっと血を吸い終わると、草場の影で一休みするという特徴があります。牛さんの傍に草むらがあれば、すべて刈り取ってしまいましょう。そうすることでサシバエと牛さんとの物理的な距離を大きくすることもでき、接触の機会も減らすことができますね。

「吸血後は1.5m程度の高さ以上は飛行不可」についてはどうでしょう。
サシバエは吸血時には強い痛みを、その後は激しい痒みをもたらしますので牛さんの感じるストレスはすさまじいことでしょう。しかし、それ以上に問題となるのはサシバエが牛伝染性リンパ腫(旧病名:牛白血病)の拡大に(悪い意味で)貢献しているということです。そのウイルスに感染している牛の血を非感染牛へとうつしてしまう危険性がありますね。
防虫ネットで感染牛と非感染牛の間にしきりを設けている農家さんもいらっしゃいますが、吸血後の移動が問題となるため、そのネットの高さは2mもあれば十分ということになります。

また、防虫ネットについては「サシバエの体長」が鍵となってきます。
前回示した表ではオスが3.0mm~6.5mm、メスが5.0~8.0㎜とありました。
つまり、防虫ネットの網目は2.0mm以下であれば確実にサシバエの侵入を防げるということになります。逆を言えば、5㎜程度の網目だとオスはもちろんですが、メスのサシバエも防げない場合があるというわけです。ちなみに、サシバエはオスもメスもどっちも血を吸う虫ですのでどっちも要注意です。

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