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松本大策のコラム
ビタミンAと亜鉛(ビタミンコントロールは必要か?) その3

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2018年8月27日

 さて、本題の「肥育牛ではどうなのか?」に移りましょう。
 みなさんもご存じの通り、肥育牛で肉質(肉質ったってサシの部分だけなんですが)を向上させるためには、ビタミンAコントロール理論というものをきちんと守らないといけない、ということになっています。それで、肉質が悪いと血中ビタミンA濃度を測定して一喜一憂するわけです。

 しかしながら、数字というものは怖いものです。たとえそれがその一瞬だけの値であっても人を不安にさせたり、ぬか喜びさせたりするのです。
 たとえば、ストレスがかかると血中ビタミンAレベルはどう変化するのかご存じでしょうか?犬での緊縛ストレス負荷試験(死なない程度に首を絞めて、絞める前との差を調べた試験:僕じゃないよ!美濃先生という人間の医学者)では、15分で血中濃度が半分になったそうです。
 採血の時に乱暴に捕まえたりしていませんか?あるいは暴れて何度も針を刺し直したり。そういうストレスがかかった状態で採血すると、低い値が出てしまう可能性があるのです。他にも、検査の際の不手際や機械の調子、いろいろと誤差を生む可能性があります。それでも出てきた数字には説得力があります。

 はっきり言うと、僕自身は、ビタミンコントロール肥育をまったく推奨していません。
 誤解して欲しくないのは、「ビタミンコントロール理論は間違っているといっているわけではない!」ということです。ただ、肥育というのは大変複雑な要因が絡むので、別にビタミンAコントロールをしなくても、他に脂肪交雑を高くする方法はあるし、さらにいうなら「そこまで脂肪交雑を高くすることが必要なのか?その前に美味しい牛肉を作らなくてはいけないのではないか?」と考えています。
 また、ビタミンAコントロールの失敗でビタミンA欠乏を起こし死亡・廃用の事故につながったり、枝肉損傷を起こしたりするようでは、経営として全く本末転倒です。

(続く:まだまだ引っ張るよ-(笑))

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