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松本大策のコラム
牛さんの下痢が広がった場合に考えること

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2018年6月18日

 みなさんの牛さんはお元気ですか?

 下痢が増えてきたとか、なかなか止まらないという相談を結構いただきます。下痢が広がるときは、一番に思いつくのはウイルスやバイ菌(サルモネラ菌、大腸菌、クロストリジウムなど)、寄生虫などの「病原体」ですよね?しかし、病気の原因追及は、あらゆる可能性を考慮に入れて、近視眼的にならないように気をつけなければなりません。これは、肉質向上とかにも言えることですけどね。

 さて、ウイルスやバイ菌、寄生虫以外にも農場で下痢が増えていく原因にはどのようなものがあるか考えてみましょう。いろいろありますが、まずこの時期に思い浮かぶのは、粗飼料や配合飼料(とくにペレット)に生えているカビ!高温多湿ですから、いろいろな食べ物にカビが生えるこの時期。みんなで同じものを食べるので、カビ毒などがあると、みんなで同じようにお腹を壊すわけです。

 また、カビ毒でなく、カビが直接腸管に生える「牛腸管出血症候」というものもあります。これは血便や通過障害の原因になります。余談ですが、未だに血便というと「コクシだ」という人がいますが、コクシジウムはでかいので、顕微鏡で見つかるだけで、本当の原因はクロストリジウムという、鳥などが運ぶバイ菌です。ちなみに血便の原因のNo.2がカビ(アスペルギルス・フミガダスというカビ)が腸に生えることだと言われています。

 そういうときに、コクシジウムを疑ってサルファ剤を投与したり、バイ菌を疑って抗生物質を与えたりしても、効果がないばかりか逆効果になる場合もあります。まずは飼料にカビが生えていないか、異臭がしないか、を十分確認しましょう。その上で、この梅雨などの高温多湿な時期はカビ毒吸着剤を与える方が無難です。明らかにカビの生えている飼料にカビ毒吸着剤を混ぜて与えても、全くといって言いほど効果は期待できませんよ。

 次によく見かけるのが、牛さんの系統(というか最近は3元交雑ばっかりなので、「タイプ」と言った方が適切かもしれません)と、与えている配合が合っていない場合。この場合もやはり、そういうタイプの牛さんの中で下痢が増えていきます。僕は、そういう下痢を疑った場合は、尿試験紙やpHメーターを使って下痢のpH(酸性かアルカリ性か)を調べます。もし酸性でしたら、飼料のデンプン(NFC)が多いか、発酵速度が速すぎることを疑います。この場合、とりあえずアルカリックスなどのアシド−シス補正のための鉱塩をおいて状態の変化を見ます。それでもだめなら飼料設計の変更です。

 pHがアルカリ性の場合は、タンパク質の消化不良で大腸の中で二次発酵している可能性を疑い、生菌剤の給与や繊維の増量などをします。それでもだめならやはり飼料設計変更です。

 他にもいろいろな可能性を疑いながら農場巡回をするわけですが、とにかく怪しいやつを見つけたら、必ず他の可能性も疑う!というのは鉄則です。人間は、怪しい犯人を見つけたら、それにこだわってしまう傾向がありますからね。
 
 
 
 
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