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松本大策のコラム
治療法への誤解をなくす

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2018年5月18日

 松本です。みなさん、そろそろ暑くなってきましたね。暑熱感作への対策はなさっていますか?

 ところで、今回は暑熱対策ではなく、「もっとも効果的に獣医さんの治療を受けるコツ」についてのお話しです。ときどき耳にするのが、「共済に入っているから、最初からいい薬を使ってもらえない」とか「共済組合では、続けて子宮洗浄をしてもらえないから…」とかいうお話しです。でも、実はこれは誤解なのです。開業医の僕が言うのもなんですが、僕自身8年間共済組合の獣医師でした。前述の「・・してもらえない。」というのは、本当は「保険適用ではない」と言うことです。つまり、自己負担なら処置出来るのです。言ってみれば、歯医者さんで、「入れ歯は保険でやってもらえるけど、インプラントは自己負担ですよ。」というのと同じです。家畜共済の保険は適用範囲というものがあります。これがないと、もし悪徳な開業医だったりした場合に、どんどん診療費をつり上げちゃうかもしれないでしょ?ま、そんな悪徳な獣医さんはいないと思いますが、とにかく「保険」で出来ることには上限が設けてあります。

 しかし家畜共済のよいところは「混合診療が出来る」と言うことです。どういうことかというと、人間の健康保険では基本的に保険適応でない先端医療などをしたいとなると、最初の検査費とかから健康保険適用分を返還しなければならず、その病気の治療が「全額自己負担」となるのです。しかし、家畜共済の場合は、保険適応と併せて、保険で認められない治療も「認められない部分だけ自己負担」で出来るのです。

 現場の獣医さんは、農家さんの懐を考えて「保険ではこの処置しか出来ないから」とやってくれるのだと思いますが、農家さんから「先生、自分ではみ出す部分の治療費は払いますから、先生の納得のいくよい処置をして下さい。」と言ってもらえれば、子宮洗浄を3日間続けてでも、マイコが蔓延していてニューキノロン(バイトリルなど)しか効かないような農場でも、「初診から」ニューキノロンを使ってもらえるのです。

 もちろん自己負担ですが、経済動物である「牛さん」の治療は、一刻も早く適正な治療をしてあげなければなりません。そのための負担は、惜しまない方が、かならず最終的にはお得ですよ。(つづく)

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