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笹崎直哉のコラム
アタリが治らない

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2018年4月24日

 皆様お疲れ様です。今回はアタリのお話をしようと思います。これは牛さんが群で喧嘩したりなど物理的な衝撃で作ってしまう打撲傷を指します(正確には挫傷と呼んでおります)。アタリはコブのように腫れあがり外見は非常に痛々しいです。腫れものといえばその中身は膿を思い浮かべるかたがいらっしゃると思います。アタリはそのケースではなく中身が血液だったり漿液だったりと牛さんの体液が溜まってできてしまうことが大半です。

 アタリは牛さんが出荷前であったりとステージによって治療方針が変わってくるのですが、抗生剤と消炎剤、止血剤の投与が基本となります。でも血管が破綻しやすい状態を考えてビタミンAと亜鉛を入れてあげますし、血液が固まる止血因子としてCaが重要な役割を担うため、その補充の意味でもビタミンAを注射するのも良いです。また破壊された赤血球を代謝にてお掃除してくれる肝臓の機能を上げるために強肝剤を入れてあげるのもお勧めです。
先日このような電話が入りました。

「母牛の肩にアタリが出来たものだから、群から離して隔離しました。でも一か月経過しても腫れが引いていかない」

アタリの場所は左肩甲骨前縁のさらに前方。筋肉注射する部位とほぼ同じであったため注射痕も疑いましたが、触診で水膨れの感触であり、中身が血液であったのでアタリであると確信しました。そしてさらに気になったのがアタリの一部に擦り傷が出来ていたこと。
(写真、分かりにくいです。ごめんなさい。)

あまり擦り傷にはお目にかからないので違和感があったのですが、隣の牛さんがスタンチョンに入りエサを食べている光景を見てハッとしました。アタリで腫れているところはエサ食べているときにスタンチョンやその下のコンクリにぶつけているのではないかな?だから治らないし、擦過傷ができているのかな?

この判断に基づきスタンチョンのないお部屋に隔離してもらいました。するとやはり腫れが減っていきました。今回は意外な発見でした。普段の診療でどんなヒントがあるか分かりません。常に気を付けていきたいと思う笹崎でした。

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