「いまからちょっとだけ聴診するからね。怖がらんでいいからでいいからね。」
「おなかが痛いの? 今から押すところが痛かったらちゃんと教えるんだよ。」
「尿石症の発生にはちゃんとしたメカニズムがあります。摂取したたんぱく質は・・・」
「カジカジ・・・この乾草はとてもいいものですね!」
いまから去ることちょうど4年前・・・ 2004年8月3日、当時大学3年生の私は友人の実習の補講に付き添い、付属牧場に来ていました。その場所で、生まれて初めて大動物の臨床獣医師に出会い、牛の診療を見ました。
その人こそ松本大策先生でした。
それまで診療を見たこともなく、まったくと言っていいほど牛の知識も何も持っていない自分(乳房の数さえ知らず・・・)にとって、牛に語りかけながら治療をし、かたや牧場のスタッフや僕らに牛との接しかたを教え、明快な理論で病態生理を説明し、いきなり牧草をかじり始める松本先生との出会いのインパクトといったら、黒船に乗ったペリーが浦賀に来航したときの漁民のそれとかなりいい勝負でした。
子牛の診療中に松本先生が話してくれた言葉は今もかなりはっきりと覚えています。「牛さんは臆病な動物です。絶対に驚かしてはいけません。 驚いて警戒してしまった牛さんは本当の病態、症状を隠してしまいます。 だから牛さんに声をかけ、自分の臭いをかがせ、ゆっくりと接していくんです。」夢中でメモを取り、一緒に牧場を回りながら(そんなに長くはなかったと記憶していますが)、「大動物診療ってかっこいい!!」と大動物獣医師と牛の魅力に惹かれていきました。そして気がつくといつしか、大動物獣医師を目指していました。
当時、松本先生の診療を見ながらメモをとった汚い紙は今も家にあり、ハイエナ(牛??)に臭いを嗅がれている人間???の粗末な絵が書いてあります。その下には「驚かせない」「症状を隠す」等の新しい生物の生態のようなものが走り書きされています。プライベートなもののため掲載はできません。
その後4年生になって産業動物獣医学の研究室に入り、シェパードで実習もさせてもらい、今年四月より(有)シェパードの一員として働いています!気がつくと入社してから4ヶ月が経ちますが、農家さん、先生・スタッフのみなさん、畜産関係の方々にまだまだガッシリと支えてもらっている状態です・・・ これから一人前の獣医師となり、皆さんの役に立てるようガンバリマス!!ビシバシと厳しく(時にやさしく)ご指導、ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願いいたします!!!