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蓮沼浩のコラム
第492話:バトル

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2017年10月26日

 出張で色々な場所へ行くと、その場所の街並みや自然を観察するのが非常におもしろくて好きですね。狭い日本といわれますが、やはり地域差は結構あると思います。鹿児島県は常緑樹が多いので小生のいるところはなかなか紅葉が見られないのですが、寒い地域は綺麗な紅葉が多くてとてもきれいで心が癒されます。
 
 
 獣医師となって多くの農場を見てきました。そして往診を回る中で時々強烈な体験をすることがあります。それはズバリ親子喧嘩と夫婦喧嘩です。おそらくほとんどの獣医さんは農家さんでこれらの喧嘩に遭遇したことがあるのではないでしょうか(笑)。小生は様々な農家さんの親子喧嘩や夫婦喧嘩を見てきました。往診先で農家さんから「先生、もう牛の治療はいいから、うちの○○の治療をしてくれ!!!」と鬼気迫る顔で懇願されたこともあります。もちろん、○○はその農家さんの息子さんの名前がはいります。診療に行くと、牛の治療はそっちのけで相手に対する不満を機関銃のように話してくださる方もいます。もうしゃべり出したら止まりません!

 妊娠鑑定をしていると、なんだか今回は妊娠プラスの頭数が少ないです。すると、徐々に横にいた奥さんと旦那さんの顔つきが険しくなり、突然直腸検査をしている真横で激しい怒鳴りあいのバトルが勃発します。小生は慣れっこなので全く平気ですが、戸田獣医師は心臓がドギマギしてしまい、妊鑑の結果を伝えるのが恐ろしくなったこともあるそうです(笑)。ただ、このように獣医さんの前でも関係なく派手に喧嘩をしてくれる農家さんはなんだかんだ言って、喧嘩はするけど仲良く頑張っているように見えますし、ある意味非常に微笑ましいです。

 ただ中にはなかなか厄介な場合もあります。一言も親子で口をきかないパターンがこれに当たります。この場合は獣医さんが時と場合によっては間に入り、通訳のような仕事をすることもあります。また、二人で考え方が違うので、治療をする時にかなり気をつかいます。片方の意見だけで話を進めると後でとんでもない問題が勃発する危険性があります。また、トラックに書いてある「○○畜産」という文字が黒のスプレーで塗りつぶされているのを見たときは、思わず頭を抱えました。ついにここまで来たかという感じです。

 いろいろあるのは百も承知。でも、そんな中で「ありがと~」の一言が出せればきっと今の冷め切った関係が下げ止まると思いますよ。良くなるとは言えませんが、下げ止まることは保証します。小生も頑張ろ!

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