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蓮沼浩のコラム
第487話:シンギュラリティー

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2017年9月21日

 今回はちょっとコラムの雰囲気を変えて「シンギュラリティー」というものについてお話ししてみようと思います。

 「シンギュラリティー」とは「技術的特異点」と言われています。これは「テクノロジーが急速に変化して、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような来たるべき未来」といわれています。2040年には確実に世の中が激変していそうです。

 例えば、今では携帯電話やスマートフォンが無い生活が考えられない人がほとんどではないでしょうか。おそらく携帯電話のない生活に後戻りはできないと思います。しかし、1990年代ではスマートフォンはもちろん無いし、携帯電話もほとんど普及していませんでした。きっと2040年には想像を絶した、それどころではない変化があると思います。

 「人間の生みだしたテクノロジーの変化の速度は加速していて、その威力は、指数関数的な速度で拡大している」。非常に含蓄のある言葉です。多くの未来予測ではテクノロジーの進歩を線型的展望で予測していますが、実はこの予測方法では未来に物事がどれほどの勢いで進歩していくかを過少評価しています。20世紀の100年間で達成できたことは西暦2000年の進歩率に換算すると20年で達成することになり、今後その速度は指数関数的にさらに早くなります。実際はテクノロジーの影響を比較的受けにくい農業の分野でも、近年は凄まじい勢いで技術革新が進んでいます。確かに最近の肉用牛の世界を見ていても、テクノロジーの変化の速度が速くなっている気がします。スマートフォンを片手に毎日の業務を行ったり、コンピューターを使ったりすることは普通になっています。また、様々なセンサーを用いて牛さんの状態を把握したり、血液検査から多くの情報を得たり、遺伝子工学を駆使して種雄牛をつくったりもしています。凄まじい勢いで技術革新が進んでいると思います。

 小生が獣医師になったころにはA5の12番なんて本当に珍しかったのに、今では全然珍しくありません。多くの農場が枝肉重量550kg以上でBMS12のA5をつくっています。とにかくここ数年、時代の流れの速さにもうひーひー言いながしがみついている小生ですが、産業動物の獣医師のあり方というものも、今後激変していくのではないかといろいろ思っています。未来の獣医さんはどんな姿になっているのでしょうね。

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