(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
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「北国の人工授精師日誌(4)」

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2010年9月28日

〜 デビュー 〜

 私の仕事を語る上で外せないのが、家畜市場(黒毛)です。入組した月に初めて連れていかれ、それ以降毎月行きましたねぇ。農家さんで集荷→市場のカンカン(体重計)→繋留場→セリ前の繋留 をする訳です。
 モチロン牛引きをした事が無い私ですが、「大丈夫?」と先輩に気遣っていただいたにも関わらず「うち、女扱いされるの嫌いなんですよね」と生意気な事をぬかしよったそうです。自分の記憶にはあまり残ってはいませんが、まぁ・・・言いそうです。もともとここの農協に入ってすぐに先輩から「男女関係無く同じ仕事してもらうで〜」と言われて、嬉しく思っていたんです。ちなみに、その事を思い出したのはこのコラムを書いている時なのですが、今思うと何て感じ悪いヤツでしょうね。
 そんなやり取りはさて置き、とうとう初の牛引き体験になりました。中学から大学まで「勉強<部活」の生活をしていたお陰で、足腰には自信があったので何とかイケると思っていましたが・・・やはり惨敗でした(;_;)先輩方に「牛引きは、力よりコツ」と言われるのですが、やはり力が入ってしまうんです。大人しいコはのんびりしていてこちらの後ろをてくてく歩いてくれます。しかし、中にはうるさい元気のいいコもいて、家畜車を降りる時から「やったるでぇ!」(あくまでも私のイメージです)と気合十分のコもいます。そして、いつの間にか先を越され・・・まぁ、ダッシュしちゃいますよね。しかも、ロープを手にグルグル巻くと危ないと言われているので、最後に頼れるものはロープの端のかたまり(たま結び?)。なのですが、相手は四駆、体重も桁が違う・・・・・・結局は最後の頼りも手放してしまい、情けないかな、繋留場をグルグル走るはめになるのでした。ちなみに、当時は♀で牛引きをしている人が殆どいなかったせいか、最初の頃は牛を逃がしても誰かが捕まえてくれたのですが、しばらくすると「またか、頑張るねぇ!」と温かい声援を送って見守ってくれるようになりました。
・・・一種の愛情でしょうか(^皿^)

 そんな私も牛引き歴何年かになり、「牛引き=走ったモン勝ち」という勝手な方程式を自らの中に確立し、ロープも手放さなくなりつつある頃にふと目にした光景・・・。それは、腰の曲がったおじいちゃんが自分の牛を引いているんですが、ロープは軽く持ち肩にたらし、その後ろをまるでおじいちゃんの歩く速さに合わせるかのごとく、ゆっくりと歩く牛。まさに散歩。その光景がスローモーションに見えてしまったほどです。近くにいた先輩に「うちもああいう風にしたいです(>_<)」というと、微笑みが返ってきました。今思い返しても・・・あの姿は理想ですねぇ(^v^)

ぴよこ@北国

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