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松本大策のコラム
子宮脱のおはなし

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2017年8月28日

 大きかったけど子牛も無事に生まれて、お母さん牛も立ってくれた。と、ホッとしたのもつかの間、お母さん牛の陰門部から、何か赤い大きなものが出ている!(写真)、となるとみなさんびっくりしますよね?


写真

これは子宮脱といって、分娩後の怒責(後陣痛という方も多いです)が強く、子宮が反転して出てきた状態です。気をつけないとお母さん牛の生死に関わる危険な状態であることを、まず念頭に置いてください。見つけたらすぐに獣医さんを呼びましょう。ただし、その前にいくつか自分でやっていただきたいことがあります。

 まず子宮にお砂糖をたっぷりまぶし(細菌感染の点から好ましくないという方もいますが、僕は子宮の保護の方が時間的に優先で、細菌感染は獣医さんが到着してからでも十分間に合うと思うので、お砂糖は絶対おすすめです。)、燃えないゴミとかを出す丈夫なビニール袋(燃えるゴミの袋でもいいですよ)で出ている子宮を包んで、傷がつかないように、また、子宮が乾燥しないようにします。親が座り込んだりした際や子牛に踏まれたりして子宮が傷つくと大出血を起こすのです。

 それから獣医さんを呼びます。後は獣医さんがきちんと整復して、陰門部を塗ってくださるはずです。もしも冬場で気温が低い場合、脱出した子宮が冷えて体温が奪われますから、ビニール袋の上からぬるま湯(39℃くらい)をかけてあげます。整復時荷は冷たい水で子宮を洗浄した方が子宮は収縮して整復しやすいのですが、それとは別に獣医さんが到着するまでは、保温をはかってください。それから、意外に「その後」を放置しやすいのですが、そのお母さん牛を連産で使いたいのであれば、5日から1週間くらいは獣医さんにお願いして治療してもらいましょう。子宮内膜炎とかを防ぐのは繁殖障害を起こさないためにとても重要なのです。

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