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笹崎直哉のコラム
チェックポイント~分娩が終わった後に~

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2017年8月8日

 皆様お疲れ様です。今回は繁殖農家さんにとってビックイベントであるお産関連の病気について症例紹介を織り交ぜながら、話を進めていこうと思います。ある日「お母さん牛のお尻が腫れている。しかもエサを食べない」との連絡を受け往診に向かいました。そのお母さん牛は分娩後1週間経過しており、初産。自然分娩で赤ちゃんを出産。いざ望診に入ると、尾を挙げて背中を丸める姿勢をとっており、外陰部が腫れあがっており、いかにも痛くて苦しそう。

体温は40.2℃で食欲がないので全身症状が出ているタイプでした。診断名は「産褥熱」。この疾病は、分娩時の子宮または腟などの損傷部位からのバイ菌が感染し熱が出たり、食欲が低下したりする病気を指します。
実際に消毒した後、産動に手を入れてみると、薄い黄色の膿汁と膣粘膜が熱を持っており浮腫んでおりました。おそらく産褥熱発生のストーリーとしては分娩時に赤ちゃんを出すのに努責(いきみ)が弱い、赤ちゃんが大きかったなどの理由により時間が掛かってしまい産動を傷めてしまった、赤ちゃんの蹄や歯が産動に強く接触して傷めてしまったことが引き金となり、時間の経過により毒素が血流を介して全身に回ってしまったことが考えられます(あくまでも予想です汗)。
実際に血液検査でも筋が痛んでしまったときに跳ね上がるCK(クレアチニンキナーゼ)というリン酸の転移酵素はかなり上昇していました。

 このような疾病を防ぐためにも、お産のときはどうしても子牛さんに気がいってしまいがちですが、母牛の外陰部や産動の方にも注意を払ってください!(^^)!。もちろん分娩部屋を清潔に保つことも重要ですよ。
当院では難産で呼ばれた際に無事赤ちゃんが生まれた後、お母さん牛の産動のチェックは必ず行います。そのチェックポイントとしては①もう一頭赤ちゃんが隠れていないかどうか(双子のチェック)②産動の裂傷、出血のチェックです。私は産動の状態確認に関しては腟鏡を用いて行うときが結構あります。

産動全体の観察ができるのでお勧めです。意外にも腟が少し避けていたり、膣粘膜の内出血が所々にあったりします。なにか異変があったらすぐに獣医さんを呼んだり、実際に手を消毒し、産動の状態を自ら確認してみたりと行動に移すのも重要です。これからのお産で是非とも意識してみてくださいね~~!(^^)!。

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