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戸田克樹のコラム
第119話「年始の難産②」

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2017年1月12日

いろいろとやってきましたがいずれもうまくいかず…。
産道は往診直後よりは開き、捻転度合いも少しはよくなったのですが、あくまでも少しだけです。
お母さん牛は目を「グワ!!!」っと開き、非常に苦しそうです。

いよいよ決断です。帝王切開に踏み切ることにしました。

今回は数面が執刀です。助手には蓮沼がつくことになりました。
戸田は外回りになりました。

途中で座りこむ可能性が高かったため、最初から側臥位にしてオペ開始です。
ささいなことですが、リスクヘッジはオペを安全かつ円滑に進行するためには非常に重要です。

捻転しているためか、子宮に柔軟性がなく、さらに子牛がかなりの大きさであることも判明しました。結果、「子宮がもってこれない!!!!」という展開となったのです。

本来であれば術創から子宮を外に出して子宮を切開し子牛をひっぱりだします。
しかし、今回のケースでは子宮を外に出せそうにありません。やっとこさ前肢をひっぱって術創の近くまでもってこれましたが、それが限界でした。めいっぱい引っ張って、そこで切開です。羊水が腹腔内に漏れ出ないよう注意しながら子牛を娩出。

農家さんも含めて男4人で「えーい!!!!」とひっぱってやっとこさでした。

子牛は元気でした。
すぐさま母牛の閉腹に移行です。
寝かせているせいでルーメンガスがはってきて、縫合にはかなり苦戦しましたが無事にオペも終了。

子牛が冷えないよう、オペ後はすぐに投光機の設置にかかりました。

翌日はあまり元気がなかった母牛もその翌日からは歩き回るようになり、エサも食べ始めました。
子牛もお母さんのミルクをしっかりと飲み、非常に元気に過ごしています。

母牛はまだ油断はできませんが、現在は経過良好。治療継続中ですが、このまま順調に回復してもらうために、全力で治療にあたっていきます!

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