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蓮沼浩のコラム
第456話:初産の帝王切開

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2016年12月22日

 気が付けば12月も残りわずかとなってきました。やることいっぱいあるけど、しっかりと取り組んで新年に向かっていきたいですね。それにしても時の立つのは早いです。

 獣医さんの仕事の中で非常に重要なものとして、お産をうまく介助して無事に子牛を生ませるということがあります。ただ、中にはそれこそお腹の中にいる子牛が大きすぎたり、母牛の産道が狭すぎたりして経腟分娩が不可能な場合もあります。こういう場合には帝王切開手術を実施することになります。

 実は先週、2件の帝王切開がありました。そしてともに初産牛。胎子がデカくて、経腟分娩不可能と判断しました。よく考えると、帝王切開になるのはやはり初産の牛が多い気がします。ただ、この初産というところが非常に悩ましいんですね。できることならば2産目以降のことも考えて、お腹を切ることはあまりしたくない。でも、子牛は大きいし、経腟分娩できたとしても肋骨骨折や胸部圧迫により子牛が死亡するリスクも高い。下手をすると母牛まで相当なダメージを残してしまいます。

 胎子が大きい場合はとにかく胎子の頭と手にバンドをかけます。大体この時点で出るかでないかはわかるのですが、ここで農家さんとひとまずどうするか話し合います。いろいろな考え方があるので、どれが正しいかはわかりませんが、小生はとにかく軽く牽引して手が産道にギチギチで挿入できない場合は速やかに初産だろうと何だろうと帝王切開に踏み切るようにしています。ここの判断が非常に重要だと思っています。でも、これが非常に難しい点でもあります。特に初産だとなおさらです。ちょっと引いてみてすぐにダメそうな時は牽引を中止して子牛を子宮の中に押し戻してしまいます。結構この判断は早いと思っています。色々と意見がありそうなポイントですが・・・。そして後はすぐさま手術に突入です。帝王切開は適切な判断のもと早期に実施すれば、非常に有効な手術です。が、その後しっかりとその母牛が繁殖牛として活躍してくれるかどうかが悩ましいのです。大丈夫と思うけど、今回の初産牛2頭がしっかりと繁殖牛として活躍できますように!


しっかりと受胎して、2産目からもうまくいくといいのですが。

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