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ゲストのコラム
「幸せな牛飼いとなるための10カ条−2 「基本技術が大切」」

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2008年4月1日

 農家さんに行って話を聞くとき、子牛さんへの配合給与量や、牛さんごとのエサの食いかたなどを、すぐに答えられる人とそうでない人がいます。特に多頭化が進むと、1頭ずつがどういう状態にあるのか見逃しがちです。和牛の場合、子牛さんは下痢や風邪など色んな病気に遭遇します。早く見つけて手当してやれば軽くすんだやつが、遅くなって重篤になり発育に影響することは、子牛さんにとってもかわいそうだし、経営者にとっても大きな損失につながります。
 いくら新しい技術を駆使したり、立派な施設を作っても「基本的な牛の飼い方」が出来ていなければ、何にもなりません。基本技術がきちっと出来ていることが、まずは大事です。
 以前勤めていた北海道日高の新ひだか町静内では、新しく牛飼いを始める人が多かったので、指導機関が協議しつつ普及センターが中心となって、飼養管理マニュアルを作成しました。とにかく、そのマニュアルに忠実に牛飼いするよう徹底し、月に2回程度巡回指導しながら基本どおりの管理をしているのか、子牛の発育はどうなのか見て回りました。幸い、農家の皆さんが基本を忠実に守り、真剣に取り組んでくれたので子牛さんの発育は良好で、肉牛市場で高価格販売することが出来ました。初出荷の子牛が電光掲示板で60万円を超え、農家さんが大喜びする姿は今でも忘れられません。
 施設が古くて換気が悪くいつもじめじめしている牛舎や、敷きわらが十分確保できないために牛さんが汚れがちだったり、なかなか思い通りの飼い方の出来ないことは多いです。しかし、牛さんにとって居心地が良い飼い方(英語でCow Comfort)とはどういうものかを、常に念頭におきながら飼うことが、人と牛さん双方の幸せにつながります。

つづく
著:胆振普及センター 出雲将之

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