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笹崎直哉のコラム
胎盤停滞について ①

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2016年11月1日

 皆様お疲れ様です。先日、とある農家さんで子牛の去勢をしてくれてのことで往診に向かいましたところ私は、ある異変に気づきました。「おや?これは?」
以下の写真をご覧ください↓↓(._.)

 お分かり頂けたでしょうか?3頭とも似た者同士の子牛ちゃん達ですよね!!すぐさま、農家さんに「この子たち似すぎではありませんかね?」と聞いたところ「じゃろー。三つ子だよ~。1ヵ月くらい前に戸田先生がお産に立ち会ってくれたのだよ~」とのこと。
「えー!!!」私は三つ子に出会うのは初めてだったので発狂してしまいました。さらに「お母さん牛は分娩苦労しただろうな」と思ったので、見に行ったところ、これがまた何もなかったかのようにポケーとした顔つきで優雅な午前中のひと時を過ごしていました。明らかに元気、活力問題なし。ほんとお母さん牛は強いなーとこの瞬間改めて感じました。次会うときはどのくらい成長しているか楽しみです。どうか3頭とも仲良く元気に育ってほしいものです。

 さて今回のコラムのテーマは「胎盤停滞」についてです。先月の診療で立ち会うことの多い疾病でしたので、紹介しようと思います。
 牛さんは一般的に胎子娩出後6~8時間で胎盤が排出されます。しかし分娩後、胎盤の剥離が十分に進まなかったり、後陣痛が弱い場合、一定時間内に胎膜が排出されない場合があります。これを胎盤停滞といいます。基本的には分娩後12時間が経過しても胎盤が排出されない場合、胎盤停滞と診断されます。

 さあここで胎盤停滞に陥ると何が問題なのか。それは「子宮の回復を妨げ、子宮内膜炎を導いてしまうことで受胎成績の低下を招くこと」です。また胎盤が独特の強い腐敗臭を発し、不潔なため、そのまま放置すると衛生管理上よくありません。子牛を親付けで哺育されているところは尚更衛生上での障害を招いてしまいます。
 胎盤停滞の原因はまだ明確ではありませんが、一般的に乳用牛において泌乳量の多い牛、乾乳期に太り過ぎてしまった牛さんに多いと言われています。
 また牛さん全般的には分娩予定よりも早く、胎盤が十分に成熟しない段階で胎子が生まれてきた場合、予定日前に分娩誘起を行った場合も発生しやすいとされています。それとは逆に分娩予定日を過ぎた場合、難産の場合、、、等々、様々な要因で発生しますので周産期においてはとても厄介な疾病です。
 分娩後はつい子牛の管理に気を取られてしまいがちですが、初乳を飲んでいるか確認する際には是非お母さん牛の胎盤がしっかり排泄されているかどうかもチェックしてみてくださいね。次回は治療について紹介します。

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