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松本大策のコラム
お天気と牛さんの食欲

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2016年10月14日

 みなさん、ようやく涼しい季節がやってきて、牛さんも食欲が上昇してきたのではないでしょうか?暑い夏は、本当に夏バテで食欲も低下しますよね。
 でもそれだけではなく、他のお天気の変化でも食欲や体調が変化することがありますよね。たとえば、雨の前とか台風の後先。
 これは、雨や台風の時に環境の気圧が低下することが原因だと考えられています。実際に、25年くらい前かな?NOSAI千葉の先生が、気圧の変化と第一胃ガスの発生頻度の関係を調べて発表なさっています。

 どうして低気圧が来ると、牛さんの食欲が低下してしまうのでしょうか?ここからは僕の推測なので、反証をお持ちの方はいつでも教えて下さい。

 気圧が下がるとどういうことが起こるか考えてみましょう。
 たとえば飛行機に乗って上空へ達すると気圧は下がりますよね?このとき、ペットボトルは(特に炭酸飲料などの場合)パンパンにふくれてしまいますよね? そして上空でフタを開けて飲んだ後、ふたを閉めておくと、着陸したときペットボトルは押しつぶされたようになっていますよね。これはペットボトル内の気圧が上空の低気圧の時のままなので、地上の気圧の高さによって押しつぶされてしまうのです。

 牛さんの身体の中でも、気圧が下がると体内のいろいろな液体や気体がふくれると考えられます。1つはもちろん第一胃内のガスや液体です。そうなると、第一胃の異常発酵がおきてガス(急性鼓張症)になったり、第一胃内での毒素発生が増えて筋肉水腫が増えたりします(これは実際以前体験したことがあります)。

 他にも液体や気体がありますよね?たとえば脳脊髄液や血液、リンパ液など。これらの圧力が高くなると、当然脳や神経、心臓などには負担がかかりますし、血管やリンパ管から体液が漏れ出す確率も高くなります。お年寄りが、雨の前は腰が痛いというのも、同じ理由ではないかと思います。ちなみに肺の中は、いつも外と通じていますから、気圧の変化が起こっても肺の空気の圧力は変わりません。

 このように、牛さんの体内の圧力の変化だけでもいろいろと大変なのですから、せめて第一胃くらいは発酵が安定するように、気圧低下の前後は、ソフトシリカやゼオライトなどの吸着剤やアースジェネターなどの生菌剤を多めにするとか、トルラミンのような酵母製剤を与えるとか、粗飼料を心持ち増やすとかして牛さんの負担を減らしてあげましょう。

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