2016年8月30日 今日のお話は、主に獣医さん向けになるかも知れませんが、みなさん、パラスチミンというお薬(ゼノアックのネオスチグミン製剤です。)はご存じだと思います。牛さんの第一胃の動きが悪いときに打ってあげると第一胃が動き始めるということで、食滞やルーメンアトニー(胃の運動が悪くなる病気)が改善して食欲も戻りますよ、というお薬です。 しかし、このお薬には他の働きもあるのです。本日のお話しは、このお話しです。 ここのところ何例か、子牛の起立不能についてのご質問をいただきました。生後1ヶ月齢程度の子牛が多かったです。 子牛の起立不能というとビタミンB1欠乏による大脳皮質壊死症やボツリヌス菌による敗血症、などが思い浮かびます。しかし、ビタミンB1欠乏症は、以外に転帰が早い(つまりけっこうすぐに死ぬ)し、ビタミンB1、B6、B12は高単位での投与をお願いした翌日も変化がなかったこと、ボツリスヌス症では後肢の麻痺が特徴的ですが、相談の子牛は四肢の異常が特徴的だったこと、以外に顔はキョロンと普通だったとのことでした。 そこで、人で報告のある「重症筋無力症」という病気に似た状態ではないかと思いました。この病気は神経と筋肉のつなぎ目で「筋肉を動かしなさい」という情報が伝わりにくくなる病気です。 それで、最初のお話しに戻りますが、第一胃運動改善剤として使われているパラスチミンが実はコリンエステラーゼ阻害薬なのです。パラスチミンの効能書には、消化管機能障害と排尿困難の改善しか書いてありませんが、このような筋無力症による起立不能の時も検討する価値があると思います。 ※2017年8月15日一部訂正いたしました。 前の記事 百合茂号 逝く | 次の記事 ハチのお話し |