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戸田克樹のコラム
第99話「脱毛と低コレステロール②」

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2016年8月16日

戸田は気になった症例や経過を見ていきたい症例に出会うとすぐに写真を撮ります。
「お。すごい下痢だ。」パシャ
「お。これはひどいケガだ。」パシャ
という具合です。そして、こんなことをやっていると…こうなります。

整理できていない写真が大量に。ファイリングできていない散らかったデータファイルが出来上がっています。
ひどいときは「これ、いつ撮ったんだっけ?なんの写真だ?これ??え???」ってなります。せっかく撮影したのにもったいない…。(T_T)
 
 
さて、脱毛の原因が分からず実施した血液検査の結果、原因が判明しました!!!
って、もう答えでてるやないの…。

そうなんです!
タイトルにある通り、低コレステロール血症だったのです。
脅威の総コレステロール38mg/dLという数値が叩き出されました。
(総タンパク質は6.4 g/dLとしっかり上昇していたので、「初乳は飲めてたと思う」という農家さんの稟告通り、きちんと飲めていたようです。)

血中のコレステロール値は少なくとも100mg/dLを超えていてほしいところ。
コレステロールと聞くと体に悪いイメージを持ちがちですが、牛さんの場合、この数値を見ることで「短期的な栄養状態の評価」を行うことができるのです。

すなわち、この子牛は栄養不良状態にあると言えます。
思い返してみれば、体は小さかったし、腹囲も普段生まれてくる子牛より一回り細かったような…。元気がなかったのは低栄養だったからなのか。
生後間もないというのに、低栄養状態とは。

さらに、母牛の乳量が少ないことも分かったため、『人工哺育』に切り替えてもらいました。
そして、中鎖脂肪酸を含有するネオドリンクCも併用し、とにかくカロリーアップを目指します!!

1本(30ml)を1日1回10日間連続で経口投与しました。

そしてその後の様子がコチラ。

治療開始から数日は脱毛箇所が広がってしまいましたが、それも治まり、2週間後には産毛が生えてきました。それに伴うように活力もアップ。ミルクもしっかり飲んでいます。
さらに、日が経つと、地肌の色も黒味が出てきて、皮膚の「ガサガサ」感がなくなっていました。いい感じです☆

今では近づくと軽快なステップで逃げられてしまいます。嬉しい反面、少し寂しいです(笑)。

脱毛や活力減退を示す子牛には、栄養状態が良好かどうかを血液検査で確認するのは重要だなぁ…と実感した症例でした。

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