(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第568話「脂肪酸の利用法」

コラム一覧に戻る

2026年10月15日

***********************************************************
シェパードイチオシ情報
■ 尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など
***********************************************************

ルーメン発酵の結果、繊維から得られた揮発性脂肪酸はその後どのように利用されるのでしょうか。ルーメン発酵で得られる揮発性脂肪酸の代表例はC(炭素原子)が2つある酢酸、Cが3つあるプロピオン酸、そしてCが4つある酪酸の3つです。それぞれ順を追ってみてみましょう。

酢酸はサシへ
主に繊維質であるセルロースの発酵によって作られる酢酸は、牛の直接の栄養源になるわけではありません。まず、体内に吸収されたあとは細胞内でアセチルCoAという別の物質へと形を変えます。こののちに、一部はTCA回路(=クエン酸回路)へと取り込まれ、結果的にエネルギーを蓄えるATP(アデノシンⅢリン酸)が合成されます。そして、一部は牛自身の皮下脂肪、筋間脂肪といった脂肪組織へと合成されていくのです。酢酸が「サシのもとになる」と言われるのは、このように筋間脂肪へと合成される点からきています。

プロピオン酸は糖へ
そして、主にデンプンの発酵によってつくられるプロピオン酸が向かう先は肝臓です。そこで、糖新生という代謝経路を経て、プロピオン酸は「糖」へと生まれ変わります。糖は直接のエネルギー源として脳や筋肉などで利用することができます。さらに、糖は多くのATPを生み出す力があり、非常に大きなエネルギー源にもなります。そのため、糖新生を介して供給されたグルコースがATPを生み出し、それによって体内に吸収されたタンパク質やアミノ酸が再合成され、牛の筋肉が作られるというわけです。糖から生まれる多量のATPが筋肉をどんどん作る!という理由から、「プロピオン酸は増体に影響する」と言われるのです。

酪酸は絨毛発達を
最後に、酪酸は他の2つと異なりルーメンの上皮細胞でβヒドロキシ酪酸(BHBA)という別な物質へと姿を変えます。このBHBAはケトン体のひとつで、立派なエネルギー源になります(ちなみに、アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸・アセトンの3つがケトン体です)。そして、血管内に吸収されたのちに、全身の細胞でエネルギー源として利用されます。それだけでなく、酪酸には絨毛発達を促す機能が報告されており、第一胃機能を向上させる力があることが伺えます(Binod Pokhrelら、2024)。

***********************************************************
今週の動画
骨折その2

|