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戸田克樹のコラム
第561話「黒色タール便という恐怖」

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2026年8月20日

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突然ですが、「真っ黒い便」というものをご覧になったことがあるでしょうか。
茶色の下痢、黄色っぽい下痢、灰色の下痢、さらには血が混じった便と、治療が必要と思われる便にはいろいろなものがあります。

このどれよりも重症度が高いのが「黒色タール便」と呼ばれる特徴的な見た目の下痢便なのです。

先日、「呼吸がおかしい」という連絡で25か月齢の肥育牛を診察しました。
涎を垂らして、呼吸も早く、腹囲狭小。一目見て、「肺炎かな…」と思い、検温のために背後に回るとまさかの黒色便を発見。

真っ黒いドロドロとした、粘液も多く含まれている独特のテカリをした便が床に落ちていました。この展開は予測していなかったのでびっくりです。

直腸検査をしてみると、腸粘膜は一様に重度の浮腫を起こしておりブヨブヨ。相当、痛みが強いのか、直腸検査中も怒責がとまりませんでした。

大腸で出血すると、それは「血便」として血液そのものが混じった便が排泄されます。
しかし、第四胃や十二指腸といった上部消化管で激しい出血が起こると、胃酸や消化酵素の影響を受けて血液の色素が分解されていき、赤色から黒っぽい色へと色調が変化していきます。その結果、黒色便が排泄されるのです。

この牛の聴診を行った際、右けん部を揺らすと「バシャバシャ」と明瞭な拍水音が聞こえました。おそらく、第四胃炎もしくは第四胃潰瘍が起こっていたのではないかと思います。

月齢が進んでいたこと、呼吸様式が悪かったことから、今回は治療ではなく早期出荷を選択することになりました。一般的に黒色便が確認されるときは消化管内の出血量は非常に多く、腸管組織のダメージも大きいことが多いです。治療をしてもしっかりと治るかは微妙なところ…。月齢が若い、あるいは牛の体力がある場合は積極的に治療すべきですが、薬剤の休薬期間には細心の注意が必要です。

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