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戸田克樹のコラム
第554話「分娩間隔は過去の成績?その1~実は少ない授精チャンス~」

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2026年7月2日

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繁殖成績がよいか悪いかを判断するときに絶対に出てくる指標のひとつに分娩間隔というものがあります。「年1産」がキーワードとなっているように、分娩間隔は365日以内であることが理想とされており、それを目指すよう指導がなされています。ところで、この目標をクリアするためにはどのようなスケジュールであればよいのかを具体的に考えてみましょう。

まずは黒毛和牛の妊娠期間が285日であることを押さえておかなければなりません。これだけで、残された日数は80日となります。ただし、予定日を過ぎて生まれてくることも珍しくないので、7~10日ほど妊娠期間が延びる可能性を考えると実際は70日程度しか残されていないと考えた方がよいかもしれません。

「発情周期が21日だから、80日の間に3回…もしかしたら4回の授精チャンスがある」

と思いたいところなのですが、ここに「生理的空胎期間」という落とし穴が存在していることに注意が必要です。分娩後は胎盤が排泄されても、その後しばらくは悪露が出続けます。子宮も不受胎期の大きさに戻るまでにはある程度の日数が必要ですし、次の受胎に向けて体の準備ができるまでには目安として30日程度は必要であると考えられています。この間は「授精や移植がそもそもできない時期だから、絶対に空胎になってしまう」という期間なので、このような名称がつけられています。
 
もちろん、この生理的空胎期間内にも関わらず明瞭な発情が来ることもあります。ほとんどの繁殖農場では繁殖器の回復を優先して敢えて授精や移植を行わないことも少なくありませんが、「発情が来た」ということは子宮も卵巣も次の受胎に向けて体の準備が整ったサインです。発情回帰そのものは母体の繁殖器が回復したことを示していますので、それが1日でも早く確認できることは重要です。
30日の生理的空胎期間があると考えると、実際に残された日数は40~50日です。こうなると、実際の授精のチャンスは「2回」しかありません。胎盤停滞や産褥熱などを起こしてしまえば授精チャンスは1回、もしくはまったくこない状態のままこの日数を超えてしまうかもしれません。それだけ「年1産」というのは非常に難しい数字であり、決して容易なことではないということがわかります。改めて、年1産達成牧場には敬意を表します。
しかし、この分娩間隔は「過去の成績」をあらわしていることに注意が必要です。では、「いまの成績」を測るにはどうすればよいのでしょうか。そうした点についてはまた次回にお伝えします。

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