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蓮沼浩のコラム
第864話:と畜頭数雑感 その3

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2026年2月17日

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と畜頭数の推移は、当たり前と言えば当たり前な話ですが、生まれてくる子牛の頭数に大きく影響を受けます。子牛が少なければ、数年後のと畜頭数は必ず減る。これはもう、足し算引き算レベルの話です。
和牛の出生頭数はここ数年じわじわと減少しています。ということは、令和8年度の終盤あたりから、と畜頭数も「おや?」と目に見えて減ってくるはずです。統計というものは、忘れた頃にちゃんと追いかけてきます。

では、どうやって子牛を増やすのか。ここで登場するのが受精卵移植。人工授精だけで一気に増頭というのはなかなか難しい。優良母牛からガツンと採卵して、効率よく増やす。これが即効性のある方法です。なので小生はいつも思うのです。「国家が受精卵にどういう姿勢を取るかで、未来のと畜頭数はだいぶ変わるぞ」と。

そんな中、令和7年度補正予算で「生乳暑熱対応推進緊急対策」が出てきました。夏場は暑くて受胎率が落ちる。だから人工授精よりも受胎率が安定しやすい受精卵移植を支援しましょう、という流れです。6月から9月に受精卵移植をすると、1回1万円(1頭2回まで)の奨励金なり。

お、ついに来たか~~~!!!

と思って読み進めると、次の一文。
対象受精卵:ホルスタイン又は交雑種(和牛は除く)

和牛は除く・・・この5文字、なかなか味わい深いですね。ラーメンを注文したら「チャーシュー抜きです」と書いてあったような、何とも微妙な気持ちになります。なぜ和牛はダメなのか?全部に出せばいいじゃないか、と素朴に思ったりもします。
一応、国家の説明としては、和牛受精卵はすでに一定程度普及しているので、まだ一般的ではないホルスタインや交雑種を後押ししたい、とのこと。なるほど、確かに理屈は通っています。でも、小生は勝手にこう思いました。あれだけ和牛増頭、増頭と言っていたけど、今は確実にトーンが変わったな。

令和6年度のと畜頭数を見てみると、ホルスタイン305,873頭、交雑種257,752頭、合わせて563,625頭。これらがいわゆる国産牛に分類されます。そして黒毛和種は542,983頭。ほぼ半々です。ここに奨励金というエンジンを積めば、割合はどうなるか。和牛比率がじわっと下がり、国産牛比率がじわっと上がる。マーケットのニーズ、つまり「手が届く価格帯の牛肉」を意識した構造へ、ゆっくり舵を切っているのかもしれません。

交雑種といえば、普通はホルスタイン母牛に和牛精液を入れてつくります。しかし、交雑種の受精卵は違います。と場卵を使ってIVFをして作ることができます。このあたりの話はなかなか奥が深いのですが、とにかく滅茶苦茶効率よく受精卵を作ることができます。今回、と場のIVF卵はどうなるのでしょう。

国家の政策は静かに構造を変えます。

「和牛は除く」という5文字は、ただの暑熱対策事業の条件なのか。それとも、日本の牛肉生産構造を少しずつ組み替える布石なのか。さて、これから数年後のと畜頭数のグラフはどんな顔をしているでしょう。
 
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