(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第854話:世の中の流れ

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2025年12月2日

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農家さんと話していると、家畜市場の開催日数の減少や市場そのものの統廃合という話題を耳にすることがここ数年で一気に増えました。市場が近隣地域から消えれば、それはそのまま農家さんにとって大きな転換点となり、「ちょうど潮時だ」と離農を決断するきっかけになります。現場で農家さんと話していると、そんな声が本当に多くなったと感じます。しかも今の相場は子牛も経産牛も妊娠牛もどれも高水準にあり、離農するのであれば「これ以上ないほどの売り時」といえる状況です。これらが重なった今、残念ながら農家戸数の減少は避けられない流れとなっています。

では、この現象は一時的な地域の問題なのか。いえ、もっと大局的に眺めてみると、牛の世界そのものが「豚の世界に近づいていく」構造的な変化の真っ只中にあるように見えます。肉用牛農家さんの戸数は、農林水産省の統計では2000年に約10.7万戸あったものが2024年には3.5万戸以下にまで減少し、24年間で約70%もの減少です。減ったのはほとんどが小規模農家さんであり、一方で1戸あたりの飼養頭数は年々増加してきました。このような流れをうけて、開催日数の削減や統廃合が相次いでいます。市場は物流だけでなく、地域コミュニティの核でもあるため、ここが縮小すれば離農の流れはどうしても加速してしまいます。

少し視点を変えて養豚業を見ると、そこには牛の未来を映す「ひとつの答え」のようなものがあります。養豚は過去50年で飼養戸数が90%以上減少し、その一方で大規模化と法人化が一気に進み、作業のマニュアル化・分業化・データ化が極めて高いレベルまで進んでいます。つまり、養豚業はすでに「小規模から大規模へ、属人的から標準化へ」という道を先に歩んだ産業です。そして今の牛産業には、それと同じ兆候が現れ始めています。

実はこのような事は大昔から言われていたことになります。農家さんの戸数が減って一戸あたりの飼養頭数が増える。ただ、今まではまだ戸数が多かったので身近に感じにくかったものが本当にここにきて状況の変化が目に見えてわかるようになってきています。これは少子高齢化や在留外国人、インフレなども同じですね。世の中の流れがある時、顕在化する。そのような事が最近多くなってきたなと思うばかりです。

これからも大局観を持って、粛々とやるべきことを地道にやっていきましょう。
 
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