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伏見康生のコラム
NO.212:膣脱整復 ビューナー法

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2012年12月5日

膣脱は繁殖母牛ではまれに見かける病気です。

NO.212:膣脱整復 ビューナー法01

原因としては・・・妊娠末期の母牛のエストロジェン分泌の増加が骨盤周囲靭帯、陰門括約筋などを緩め、膣が脱出するとされています。おそらくはそこに大きくなった胎仔、胎胞による腹圧の上昇も手伝うものと考えられます。
妊娠末期での発生は、分娩とともに緩和し出なくなることが多いと思いますが、中には妊娠、分娩とは関係なく自然に膣が出てしまう子もいます。
そのような子は膣脱しながら寝ている時、擦れ、踏み、カラスのいたずらなどの物理的な原因により膣壁を深部まで損傷しやすく、そうなった場合は非常に予後が悪いです。

ということで、膣脱しやすい母牛には早めに見切りをつけて「今回までは産ませて売却」、あるいは「肥育」ということもあります。
その時、しのぎの意味で膣脱をさせないように様々な陰門の縫い方、膣壁の戻し方があると思います。私も現場で色々な種類の方法を見てきました。膣に何か入れたり・・・、ホースで挟んで陰門を縫ったり・・・、モーリングで留めたり・・・、マットレス縫合で陰門を縫ったり・・・、怪しげな縛り(笑)で陰門を締めたり(これはちょっと芸術的でした)・・・

そんな中で、もっともスマートで化膿、破断、再脱出等の不測の事故が起きにくい方法が私たちも行っている“ビューナー法”と思います。

かんたんに説明すると、陰門の皮下をぐるっと一周巾着の様に縫ってしまうものです。縫い針は海外でビューナー針を買うか、国内ではS状探針というものが代替できます。縫う糸は感染のことを考えモノフィラメントのものがいいと思いますが、なかなか良いものは手に入りにくいので私はナイロン糸を2重でつかっています。

NO.212:膣脱整復 ビューナー法02

仕上がりもこんなにきれいで素晴らしい!!おすすめです!

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