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蓮沼浩のコラム
第541話:アニマル・ウェルフェア その2

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2018年10月25日

 農場内での飼養管理がアニマル・ウェルフェアの考え方に対応しているかどうかをチェックするためのチェックリストがあります。

 例えば、「牛に不要なストレスを与えたり、牛がけがを負うような手荒な取り扱いをせず、日頃から丁寧に接していますか」とか「牛舎の清掃や消毒等を行い、施設及び設備、器具等を清潔に保っていますか」などの項目がたくさんあります。小生は沢山の農場を見てきましたが、実はこのアニマル・ウェルフェアにのっとった飼養管理はほとんどの農場で無意識のうちに実施していることばかりです。優良農場などは、アニマル・ウェルフェアという言葉をしらなくても、ほぼすべての項目でしっかりと対応しています。
 
 しかし・・・・・、チェックリストを確認していると、ほとんどの農場で筆が止まる項目があります。それは、以下のものになります。

 ・除角は、生後2ヶ月以内に実施していますか
 ・去勢は、生後3ヶ月以内に実施していますか

という2項目になります。この項目だけは、様々な意見や制約があり非常にレベルが高い問題になります。

 例えばアニマル・ウェルフェアに取り組もうとしても、家畜市場にでてくる牛さんは基本的には除角されていません。生後8~10ヶ月ぐらいの肥育素牛を購入してきた時点で、肥育農場ではその後除角ができないことになってしまいます。除角に関しては様々な意見があると思いますが、メリットがあることも間違いありません。

 去勢に関しても生後3ヶ月は意見がかなり分かれそうな月齢です。小生は昔去勢をする時期に関して鹿児島県の臨床獣医さんのアンケートをとったことがありますが、圧倒的に4~6ヶ月の間に実施している人が多かったです。早く去勢した方がストレスも少ないし、その後の増体が良いという意見もありますし、去勢を早くしすぎると発育が悪くなるという意見もあります。

 また、去勢の方法でも色々と違いがあると思います。観血去勢をするのか、リングでいくのか、バルザックを使うのかでも違いがあると思います。この除角と去勢の実施時期に関しては今後も様々な意見がでてくることは間違いなさそうです。ただ、小生は去勢に関しては生後70~90日程度で実施している農場を沢山知っていますが、その後特に問題があるようには感じていませんので、もしかしたら今後徐々に去勢実施時期が早まってくるかもしれませんね。

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