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松本大策のコラム
抗生物質の使用について思うこと

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2018年4月6日

 みなさんの農場には、共済組合の獣医さんや開業の獣医さんは来て下さる環境でしょうか?僕も全国を巡回しますが、なかなか獣医師の数が不足していて(うちも2名募集かけてるんですけど、ここ2年間応募がないんです。ブラック企業なのかな(涙))、牛さんの具合が悪くてもなかなかすぐには来ていただけないとか、土・日は獣医さんが回りつかないとかで、みなさん診療に関してはなかなか苦労なさっているようです。

 そういう状況ですので、巡回契約を結んだ獣医さんからの指示書で薬剤を購入したり(獣医師から直接購入は出来ないのです。あまり知られていませんけど。)、場合によっては販売店の獣医さんにお願いして薬剤を入手したりして、ご自分で治療なさる方も多いと思います。
 自分の牛に自分で処置するのは全く違法ではありませんから、ご心配なさる必要はありません。ただし、初診は必ず獣医さんの診断を仰ぐ方が、治療も効率的ですし、耐性菌の発生も少ないです。

 それから、ここだけは必ず守っていただきたいのですが、「人体用の抗生物質を牛さんに使わない!!」ということです。獣医さんの出荷制限指示書があれば、ポジティブリストの除外薬剤以外は使用することが出来ます。しかし、抗生物質に関しては、もしも畜産の現場で耐性菌を作ってしまうと、自分たちの病気の時に、抗生物質が効かない!という状況を作ってしまいます。
 確かに人間用の抗生物質には、効果の高いものもありますが、私たちは「畜産人」としての誇りを持って、決して人間用の抗生物質は使用しないようにしましょう。

 僕も人間用の薬剤では、ミネラル剤(亜鉛の点適用の薬)とか、重度骨軟症に対するカルシトニン製剤などは、子牛に限って使用する場合があります。そして、これはかなりの効果があります。でも、抗生物質と違って牛さんで使用しても、人間のお医者さんに迷惑をかけないものだけなんです。これを見て、「ああ、人間用の薬は効果が高いんだ」と勝手に解釈して人間用の抗生物質を使うと、自分や子孫に大きな迷惑をかけることになります。

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