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松本大策のコラム
今年もそろそろ注意!~スプリングライズは線虫だけじゃない(みたいよ)~

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2018年4月2日

 みなさん、前回はぐーたらしてニャンコとワンコの写真でお茶を濁してすみません。鹿児島では桜も散り、本格的な春(というか、鹿児島には春はないんですよね。冬が去ったと思ったら急に夏になってしまって…。)です。

 スプリングライズに関しては僕だけでなくスタッフも含めて何度か書いていますが、基本的に「線虫」を念頭に置いたものでした。初めて耳にする方のために簡単に説明すると、線虫は冬になると、まるで「冬眠」のように糞便中に出なくなりますし、その病的被害も見られなくなるのです。しかし、春になると、再び活動的になり病気も起こしますし、糞便中の虫卵も増えてきます。この現象を「スプリングライズ:春の目覚め」と呼ぶのです。
 しかし、今回新しいタイプの、というか「原虫」でこの現象を見つけたんで、みなさんにも知ってもらおうと思いました。ついでと言ってはなんですが、線虫についても十分スプリングライズには備えておきましょうね。

 昨年、僕の見ているある農場で、ジアルジアの大量発生が見られました。育成牛のほとんどが止まらない水下痢をして、急激に痩せてしまったのです。幸いこの牧場のスタッフである獣医さんが、小動物(ペット)の獣医さんの経験もあったので、糞便検査で本来犬や猫で見られる「ジアルジア」という原虫を見つけて下さいました。その後、チニダゾールという駆虫薬(ポジリスで除外されていないのはこの薬だけなので、もしもジアルジアでお困りの方は、そのほかのペットの駆虫薬は使わないように注意して下さい。せっかく治っても全廃棄となります!) で抑えながら、免疫の向上などを心がけた結果、秋口にはようやく駆逐出来ました。と思っていたのですが、この春、再び水下痢が出てきました。この農場のスタッフも獣医さんも感のいい方なので、すぐにジアルジアの検査をして、また動き出しているのを見つけてくれました。再度チニダゾールを添加し、その後2日目に農場を巡回しました。

 対策として以下のような手法を用いて現在格闘中です。
・スチーム洗浄で天井からワク、床まで全てを徹底洗浄。
・スチーム洗浄した後、2~3ヶ月はチニダゾールとドキシサイクリンを併用添加して農場からジアルジアを駆逐。
・ジアルジア汚染舎から牛を移動する際は、50℃のお湯500Lにクリアキルもしくはロンテクト5Lを入れて動噴で洗浄。ジアルジア対策および白癬対策です。作業時は、ゴーグル、マスク、ゴム手袋を装着して皮膚に薬液が付着しないようにしましょう。
巡回時のジアルジアの検査では以前より遙かに少なく、またチニダゾール投与2日目のためか運動性も低下し、変形も見られましたので、なんとかいけるのではないかと思われます。

 1つ愚痴になるのですが、牛さんではジアルジア症はほとんど報告がありません。まとめて報告したいのですが、以前のコラムのビデオのように、ジアルジアは活発に動き回るので、数を数えられません。「いっぱいいたのが減った」という、非常に間が抜けた表現になるのでどうしたものかなぁ、と知恵を絞っているところです(涙)。

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