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戸田克樹のコラム
第173話「子牛の下痢が悩ましい!⑤~下痢の原因はウイルスや細菌だけじゃないⅢ~」

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2018年2月21日

冷たい飲み物が消化管に入ると、おなかはビックリ仰天!
消化管の動き(蠕動運動)のリズムが狂い始めます。一部では動きがにぶくなったり、別の場所では活発に動きすぎたり、お腹の中はパニックです。

なぜでしょう

①冬に体(筋肉)が硬くなって動きがにぶくなるのと同じで、冷たいものが流れこむと周囲の平滑筋(消化管を動かそうとする筋肉)は動きがにぶくなります。
②今度は冷えたおなかを温めようと平滑筋の異常収縮が始まり動きは活発になります。運動して筋肉を動かすと暑くなってくるのと同じです。
③体を冷やしてしまうものを早く出してしまえ!という指令が下るので、筋の動きにはさらに拍車がかかります。
※「はやく外に出してしまえ!」という脳からの指令を受け、腸管内では細胞から水分が消化管内に移動します。これは冷たいもので体の芯が冷えないように体温と同温の細胞内や細胞間の水分を混ぜて冷たい液体を温めようとする目的もあります。

こんな真逆の動きが短時間のうちに交互に繰り返されてしまうのです。おなかは「ぎゅるぎゅりゅりゅりゅ…」と悲鳴を上げ始めます。

こうした一連の変化を受け、子牛は水下痢をビシャー!っと飛ばし始めると同時に、眼球がくぼみ始め脱水を呈するようになる、というわけです。

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