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松本大策のコラム
なんだか頭が痛いよ

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2017年9月15日

 肥育牛でも繁殖母牛でも時折見かける『角が変な方向へ向かって伸びて頭蓋骨に食い込んでいる』状態。初めて見たときはびっくりしました。学生時代に病理教室で死因究明の病理解剖に明け暮れ鍛えられたおかげで、今でも斧一本で脳みそも背骨の中の脊髄も傷つけずに取り出すことが出来ます。

 そういうわけで、牛さんの頭蓋骨から脳みそまでは、けっこう離れていることも知っていますが(牛さんの頭蓋骨は二重天井みたいになっているのです。)、さすがに食い込んでいる部分の角の太さを見ると、「これ、いったい何センチくらい刺さってるのかな?」とか、「抜くときに脳みそを傷つけたりしないよね?」とか不安になるような症例もあります(写真1)。


写真1


写真2

写真の例は、5cmほども頭蓋骨に食い込んでいました(写真2)。幸い脳みそには達していませんでしたし(達してたら立っていられないだろうと思うでしょ?そこが脳みその不思議なところで、場所次第では、全く普通と変わらない場合もあるのです。)、食い込んだ角を抜いた痕もとくに問題なく治癒してくれました(写真3)。


写真3

 こういう状態になる原因は、角の矯正(セリに出す前に、角を絞って天に向かうように向きを変えるのです)とか、除角の角度が間違っている場合が多いように思います。除角の時、角に対して直角よりも長く残した方向へ角は伸びます。たとえば、角を切るときに前の方が長く残っていると後ろに向かって伸びますし、後ろの方が長く残っていると前の方へ伸びます。肥育牛でもタンパクの高めの餌で飼うと角の伸びは早く、また太くなりますし、繁殖母牛の場合は寿命が長いので、どうしても角は伸びてきます。除角の時に注意するとともに、食い込みそうなくらい伸びていたら早めに切ってあげましょう。ストレスは牛飼いの敵ですよ。

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