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戸田克樹のコラム
第125話「薬が効かない耐性菌⑤」

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2017年2月21日

近ごろ体のあちこちが痛みます。お産や繁殖検診が続いており、上半身も下半身もどっちもガチガチです。ちかごろは過大子牛も珍しくなく、受精卵移植された母牛のお産に立ち会うことも多くなりました。時代の流れを感じます。
 
 
細菌のタンパク質合成工場である「リボソーム」にくっついてタンパク質を作れなくするテトラサイクリン系の抗生物質。しかし、細菌が「あれ???なんかへんなものがリボソームにくっていてくるぞ。ジャマだなぁ。」と気づいてしまったとき、プラスミドが動き始めます!

抗生物質を細菌の外にくみ出してしまうタンパク質を合成
生命の危機を感じた細菌の体内ではプラスミドDNAが動き始め、その遺伝情報をもとに抗生物質とくっつくことのできるタンパク質を作り出すのです。
こうなると、抗生物質の有効成分がリボソームと結合することができないので、その効果も発揮できません。さらに、くっつけた後は細菌の外にポイっと捨てることもできてしまうのです。これではどれだけ薬を投与してもまったく効きません。

情報伝達により仲間を救う
そして何よりも恐ろしいのは、このプラスミド遺伝子は複製(コピー)され、別の細菌にその遺伝子の一部が移されるということ。
つまり、抗生物質除外方法がまるっと書かれた図面が周囲にいる細菌にばらまかれるのです。
耐性を獲得したプラスミド遺伝情報を受け取った別の細菌は受け取ってすぐに、抗生物質とくっつくタンパク質を作り出すことができるようになります。あっという間に耐性菌の完成です。

こうして、どんどん耐性菌は増えていきます

おそるべしプラスミド遺伝子

テトラサイクリン系抗生物質の耐性菌は
1.プラスミド遺伝子が抗生物質に結合するタンパク質をつくり、リボソームへの結合を阻害
2.プラスミド遺伝子を周囲に受け渡し、耐性菌を一気に増やす
というやっかいな特性をもっているのでした

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