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松本大策のコラム
お薬のお話し その2

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2016年6月6日

 あー、疲れが抜けない。本格的に歳ですかね。昔は若かったのになぁ(笑)

 ところで、前回は抗生物質のお話しをしましたが、もう少し情報を補足しておいた方がいいかな?と思いましたので。今回は(その2)です。

 前回、抗生物質は「バイ菌をやっつける」薬で、ウイルスには効果がない、というお話をしました。あちこち巡回していると、抗生物質のことを「消炎剤(炎症を抑える薬)」と勘違いしているケースもあったからです。
 抗生物質にはいろいろと種類があって、それぞれに効果のあるバイ菌が異なる、というお話しもしました。同じバイ菌でも、場所によって効果のあるときと、効果のないときがあります。僕たちは、みな黄色人種も白人も、ホモサピエンスという1つの種類ですが、その性格や筋力、持久力など、1人1人違いがあるでしょ?それと同じで、同じ種類のバイ菌でも、家系や土地柄で「ある抗生物質」が効く(感受性がある、といいます)場合と、まったく効かない(耐性を持っている、とか耐性菌とかいいます)場合があるのです。

 よく耳にするのが、「抗生物質を使いすぎると耐性菌(効果のない菌)が増える」というフレーズです。でも、これはちょっと間違っています。むしろ、「いい加減な使い方をしているから耐性菌が増える」という言い方が正しいのです。
 せっかく効果が上がっているのに、治療を途中で投げ出したり、お薬をケチって十分な量を与えていなかったりすると、バイ菌を徹底的に叩くことができません。そうなると、生き残った奴らが抗生物質の特徴と、その対策を研究して次世代につなぐのです。
 ケンカしたときに徹底してやっつけとかないと、仕返し食らうでしょ?あれとおんなじです。あ、僕はケンカなんかしませんよ。平和主義者だから(笑)

 それから、少し面倒くさいお話しですから、聞き流して下さい。耐性菌というのは、突然変異で生まれて、いつでもいるのです。でも、突然変異した菌は、普通の菌との生存競争に負けてしまいます。でも、普通の菌が抗生物質でやられてしまうと、生存競争には弱いけど抗生物質の効かない「突然変異の耐性菌」が生き残って増えていくのです。ですから、最近では普通の菌を殺せる濃度(最小発育阻止濃度:MICと略します)よりも高い濃度で、耐性菌までやっつけられる濃度(突然変異菌発育阻止濃度:MPCといいます)で薬剤を使用するべきではないか?という議論が盛んになされています。

 この議論は置いておくにしても、病気は徹底して治す!ということを心がけましょう。今日はまぁいいか、なんて怠け心を出すと、後からとんでもないしっぺ返しを食らいますよ。

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