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桐野有美のコラム
「お産の話−13 「助産コトハジメ」」

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2007年12月26日

 これまで、正常なお産の経過をずっと見てきました。ふだんはこれが人間の手を借りずに、母牛と仔牛の協同作業によって行われているのですが、時として母子のどちらか、あるいは両方の異常によって、分娩が自然に進まないことがあります。ここからは、介助のタイミングやそのときのポイントなどを書いてみようと思います。
 助産にあたって大事なことは、慌てないこと、そして念のための準備を怠らないことです。基本的に、分娩というのは病気ではなく自然現象です。陣痛で苦しんでいる姿を見ると、何とかして早く楽にしてあげたいと考えるのは当然の感情ですし、逆に、農繁期などで忙しいときには、少しでも早くお産を終わらせて他の作業をしに行かなければならない、というのもわかります。でも、人間の都合で不適切な分娩介助を始めてしまったばかりに、かえって難産にしてしまったり、結果として母牛や仔牛にいらぬダメージを与えてしまったりすることも実際にあります。お産前から要所要所でしっかり監視し、母牛の産道が正常で、生まれようとする仔牛も活力があると判断できたら、万全の準備をしたうえで静かに待つことも大事です。
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