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戸田克樹のコラム
第563話「低カルシウム血症がもたらすもの」

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2026年9月3日

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カルシウムは食べ物からしか体内に取り込むことができません。その一方で、カルシウムは乳汁だけでなく、尿やふん便中にも排泄されるため、吸収ルートは1本なのに流出ルートは3本(泌乳期以外は尿とふん便の2本)となっています。そして、もしも必要量が吸収量を上回ってしまうと、骨を分解して血液中のカルシウム濃度を保とうとします。そこまでして血液中のカルシウム濃度をなんとか一定に保とうとするのですから、牛が低カルシウム血症(低カル)に陥っているときというのは、かなりまずい状態であることが分かります(骨からカルシウムを引っ張ってきても足りない状態)。

「低カルになると、骨がもろくなってしまうのか!」と思ったかもしれませんが、問題はそれだけにとどまりません。血中のカルシウム濃度が下がると、筋肉の運動に問題が生じてしまうのです。

これには、筋収縮のメカニズムが関係しています。脳から「筋肉よ動け!」と指令がくると、カルシウムが筋肉内で一過性に多量分泌され、それがスイッチとなり筋肉が収縮します。つまり、筋肉の収縮にはカルシウムが欠かせないのです。

「低カルになると、運動しづらくなるのか!」と思ったかもしれませんが、事態はより深刻です。もちろん筋肉は骨格筋のように体を動かす役割があります。低カルシウム血症の母牛が立てなくなったり、ふらふらと歩くようになったり、立ち上がるのに時間を要したりするようになるのは骨格筋の収縮がうまくいかなくなったことが影響しています。

しかし、筋肉は消化管にも広く分布しており、その収縮によって蠕動運動が行われていることも忘れてはいけません。つまり、低カルシウム血症になると、こうした消化管の運動にも大きな影響が生じてしまうのです。蠕動運動の低下は食欲低下(乾物摂取量の減少)にとどまらず、第一胃食滞、鼓脹症、第四胃変異・捻転といった病気にもつながりかねません。こうした疾病によって、エサを食べられなくなるとますます低カルは進行し、悪循環に陥ります。

カルシウムというのは、不足してしまうと「骨がもろくなる」、「牛が立てなくなる」といったことがイメージされやすいですが、食欲の低下をもたらす消化管疾病を引き起こさないために大切な栄養素であるといえるのです。

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