 |
第884話:和牛は減り始めたのか? ~と畜頭数から見える次の時代~ |
コラム一覧に戻る
2026年7月14日
***********************************************************
シェパードイチオシ情報
■ 尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など
***********************************************************
そろそろ和牛子牛の頭数減少が、黒毛和牛のと畜頭数にも影響し始める頃ではないか。
小生は以前から繁殖雌牛頭数や和牛子牛の出生頭数に注目してきました。約2年前から減少局面に入っていることは分かっていたため、「そろそろ肥育牛の出荷頭数にも変化が現れるはずだ」と考え、農林水産省が公表している牛肉需給予測やALICさんの統計データを改めて確認してみました。
令和8年6月に公表された牛肉需給予測によると、和牛の出荷頭数は5~7月平均で前年同期比91.6%、7月単月では89.2%まで減少すると予測されています。この数字は、一時的な出荷調整ではなく、数年前から続く子牛出生頭数の減少が、いよいよ枝肉生産に反映され始めたことを示しているように思います。
令和4年から令和6年にかけては、子牛価格の低迷や飼料価格の高騰などにより、多くの繁殖農家さんが厳しい経営環境に置かれました。その結果、高齢牛の淘汰や規模縮小、さらには離農が進み、繁殖雌牛頭数そのものが減少しています。
繁殖雌牛が減れば、生まれてくる子牛も減ります。そして、その子牛は約30か月前後の期間を経て出荷されるため、現在のと畜頭数の減少は、数年前から始まっていた繁殖基盤の縮小が、ついに統計に現れ始めたものと考えることができます。
和牛産業は短期間では大きく変化しません。繁殖から肥育まで約3年という長い生産サイクルで動いているため、一度繁殖雌牛が減少すると、生産頭数を回復させるには数年単位の時間が必要になります。
下のグラフは、全国市場へ上場された子牛頭数の推移です。

令和5年度の36万7,112頭から令和7年度には33万8,353頭となり、約7.8%減少しています。この数字から考えても、今後もしばらくは黒毛和牛のと畜頭数が減少傾向で推移する可能性が高いと考えられます。
現在は、
• 繁殖雌牛頭数の減少
• 子牛出生・上場頭数の減少
• 肥育牛出荷頭数の減少
という一連の流れが、いよいよ本格化し始めた局面と言えるでしょう。牛肉価格は供給量だけで決まるものではありません。景気動向や消費者の節約志向、輸入牛肉との競争など、さまざまな要因が価格形成に影響します。しかし、供給面だけを見れば、和牛頭数の減少は枝肉価格を押し上げる要因となります。大局的に眺めれば、これまで比較的供給が潤沢だった局面から、今後は供給が徐々に引き締まる局面へ移行する可能性が高いと考えられます。
小生たち現場の獣医師や農家さんにとって大切なのは、目先の価格変動に一喜一憂することではありません。統計データの変化から少し先の未来を読み、その変化に備えて今何を準備すべきかを考えることです。今回示された数字は、単なる「と畜頭数の減少」を意味するだけではありません。和牛産業が新たな局面へ入りつつあることを示す重要なシグナルであり、今後の経営戦略を考える上で極めて大きな意味を持つデータではないでしょうか。
***********************************************************
今週の動画
牧場への野生動物の侵入
前の記事 第883話:殺気を感じる力 | |