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松本大策のコラム
げげっっっ!

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2019年10月28日

 さすがにこの歳になると、現場で何を見てもさほど動じなくなってきましたが、それでも「げっ、やべー。どうしよ。」と思うときがあります。

 どういう時かって? それは写真のような牛さんを見つけたときです。そう、なんとなく「まさか口蹄疫じゃないよね?」って症状の牛さんを見つけたときです。

 ま、獣医師の診断として、周囲の牛さんに同じ症状が出ていないとか、口蹄疫の口腔内びらんの前の水疱は、こんなもんじゃない、とは思いながらもやはり「でもひょっとすると..。」という思いが頭をかすめます。

 もしも口蹄疫だったら大変なことになる。この農場にも、周辺の農場にも、下手したら日本中に被害が出る、なんてことが頭をかすめます。

 でも、そういうときのために「法律」というルールがあるのです。人間は弱いから、こういうルールがないと、間違った選択をしてしまう。だからこそ、「こうしなければならない」という規則が決まっているのはありがたいことです。

 僕はこれまで、10例を下らない数の「疑似口蹄疫」を報告してきました。そのたびに家畜保健衛生所の先生たちにも、当該農場の方にも心配とご苦労をおかけしていますが、たいていは「牛舎疫(ポックス)です。でも、今度は逆に、「どうせまたポックスだろう」という思いがわき上がってきます。

 でも、こういう「まさか違うと思うけど…。」というときでも、獣医師は報告して、国の指示を仰がなければなりません。それが「防疫体制」というものです。

 僕が10例を下らない報告をしているのですが、全国の報告が少ないように思います。気づいていないのか、「いやこれは違う」という診断をつけているのか解りませんが、その最終判断をするのは国です。「まさか」というときこそ、勇気を持って(面倒くさいけど)、ちゃんと報告しなければなりません。

 それから、国への要求ですけれど、「最初に報告した農場には、他の発生農場の10倍の補償をする」くらいの意識を持っていただけたらいいなあと感じています。そうすれば隠すこともありませんし、最初に報告するというのは、大変な勇気が必要だと思いますから。

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