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松本大策のコラム
抗生物質の特徴をおおざっぱに覚えとこう(耐性菌防止の意味でも)

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2019年6月10日

 スナックとかのおねーさんに「牛も風邪引くんだよ」とか言うと、「ええーっ、うっそー!(本当はそこまで興味ない)」とか言われることが多いですが、みなさんとこの農場の牛さんも、しばしば「抗生物質」のお世話になっていると思います。

 しかしながら、抗生物質にはいろいろな特徴があり、それらを活かして使用しないとかえって逆効果、ということもあります。また、効果の無い使い方をしているとかえって「薬剤耐性菌」を生む原因にもなります。

 そこで今回は、シェパードの新人研修で指導する「抗生物質の分類と使い方の注意」をコラムに掲載しようと思います。
 
 
抗生物質の分類

構造別
βラクタム系
(細胞壁の合成阻害:細胞壁のないマイコプラズマには効果なし)

 ・ペニシリン
 ・アンピシリン(ビクシリン)
 ・セフェム系(セファゾリン、セファガード(コバクタン)、エクセネル、エクセーデCなど)
 *セファガード(コバクタン)は腸に分布しないので下痢に効果なし。

テトラサイクリン系
(細胞膜の合成阻害:リボゾ−ムの30S サブユニットに結合)

 ・OTC
 ・CTC
 ・ドキシサイクリン

アミノグリコシド系
(細胞膜の合成阻害:リボゾ−ムの30S サブユニットに結合)

 ・SM
 ・KM

クロラムフェニコール系
(細胞膜の合成阻害:リボゾ−ムの50S サブユニットに結合)

 ・クロマイ
 ・チアンフェニコール(ネオマイゾン)
 ・フロロコール

マクロライド系
(細胞膜の合成阻害:リボゾ−ムの50S サブユニットに結合)

 ・タイロシン
 ・ミコチル
 ・アイブロシン
 ・ドラクシン

ニューキノロン系
(核の分裂を阻害する:トポイソメラーゼ阻害)

 ・バイトリル(バイトリルワンショット)
 ・マルボシル
 ・ビクタス
 ・アドボシン

効果的な使い方による分類
「時間依存性(1日に何回か使った方が効く)」
 ・βラクタム系(ペニシリン、アンピシリン、セフェム)
 ・マクロライド系(タイロシン、ミコチル、ドラクシン)
 →ミコチルとドラクシンは肺炎を悪化させない2つの作用が
 一週間持続する。
 ・クロラム系(フロロコール)

「用量依存性(1回分をドカ打ちした方が効く)」
 ・アミノグリコシド系(SM、KM)
 ・テトラサイクリン系(OTC、CTC)
 ・ニューキノロン系(バイトリル、マルボシル)

*以上を踏まえて、まず細菌の外側(一般細菌は細胞壁→細胞膜→核の順、マイコは細胞膜→核の順)から叩いていく。

*重症の場合、時間依存性抗生物質は1日2回~3回使用、濃度依存性のものは高単位で使用する。

*作用部位を考慮し、無効だった抗生物質が残存している間は、同じ作用部位に作用する薬剤は効果半減することを考慮し、なるべく避ける(例 ;ミコチルを打って1週間以内に発熱などの臨床症状が出るとき、フロロコールは避ける)。

*ニューキノロン系は、肺炎や腸炎の原因菌やマイコプラズマには大変効果があるが、化膿菌に弱いので連投する際は、化膿菌に強いβラクタム系を併用する。

*セファガード(コバクタン)は、腸に分布しないので下痢に効果なし。

 簡単にご紹介しましたが、このようなことを知っていて使うのと、ただ「この薬は効くらしいぞ」みたいな感じで使うのでは、農場の損害防止の面でも耐性菌防止の意味でも、まったく違うと思うのです。

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