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笹崎直哉のコラム
ルーメンについて考える その2

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2018年10月9日

 先日農家さんからお産の電話がありました。「風船が二つ出てるぞ!!」とのことで伺ったのですが、1次破水と2次破水が同時で起きている珍しいパターンでした。
胎盤剥離をしていなかったので、問題なく娩出できたのですが、初めての経験でした。思わずパシャ!!と撮影してしまいました。

 さて、今回は牛さんのルーメン内環境について触れていきたいと思います。そもそもルーメンは成牛で100~150 ℓの容積(意外と大きい!!)で、胃全体の約80%を占めます。消化管全体で考えると約50 %になるのです。ルーメンでは酸素を必要としない嫌気性微生物が多数存在し発酵により食べたものを分解しています。よってルーメンの上層はガスで満たされているのですが、酸素分圧は低く、約1%に過ぎません。そしてルーメン内の温度は39~41℃前後で維持されています。それからPHは通常5.3~7.5に維持されています。エサを食べることで発酵が進み酸性に偏るのですが、牛さんが反芻などで分泌するPH8.3前後(アルカリ性)の唾液によって微酸性に維持されるのです。

 しかし濃厚飼料多給では、多量のVFAや乳酸が生成することで微生物による処理量をこえるほどの乳酸が生成されると、ルーメン内PHは低下し始めます。そう、疾病の引き金になりかねないのです。よって採食量、飲水量、唾液分泌量のバランスがしっかりと保たれることでルーメン内の環境が整って、牛さんが健康に生活できるのです。

つづく

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