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戸田克樹のコラム
第201話「改めて前と後ろの判断を確認しましょう」

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2018年9月12日

「後ろ足から出てきてるんだけどいくらひっぱっても出てこない」という連絡を受け診療に向かったときのことです。到着までに1時間近くかかりそうだったので、待ってる間に死亡してしまう危険性もありました。「もう少し頑張って引っ張ってもらおうか。でも過大仔なら母体の骨盤を壊してしまうし…」としばらく悩みましたが、農家さんに無理を言って待ってもらいました。

到着してすぐに産道に手をいれると、まさかの前足です。頭はたしかに触れませんが、粘り強く触診すると、尾側に首を曲げていただけでした。

足だけを触って頭からきているのか、おしりからきているのかを判断できるスキルは重要です。ここで間違えてしまうと、その後のアプローチも大きく変わってきます。
蹄を触ってその次の関節が「丸い」か「とがっている」か、を意識して触ってみてください。


丸みがあればそこは手根関節なので「前肢」(図の赤丸)
逆にとがっていれば足根関節(飛節)なので「後肢」(図の黄色丸)
となります。

頭が触るかどうかではなく、肢だけで胎位を判断することができれば、獣医師を呼ぶ必要があるのかどうかなど、より冷静な判断を下すことができるはずです。

その後胎位整復はできましたが、残念ながら産道狭小のため帝王切開に。
手術は無事に終了し、子牛も元気にでてきました。子牛が生きてくれていると非常にほっとしますね。

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