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戸田克樹のコラム
第199話「子牛の下痢が悩ましい!㉑~クリプトへの困りごと~」

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2018年8月22日

診療現場でも非常に手をやくのが難治性の下痢をもたらすクリプトスポリジウムです。

こんな小さくて丸い、見た目のかわいいやつですが、感染性と病原性はピカイチです。

危険① 生後1か月以内の免疫力の未発達な時期に感染が成立してしまうこと。
     ※早ければ生後数日で感染してしまいます。
危険② 抗生剤はもちろん効きません
危険③ 消毒薬さえ効きません。バーナーなどで床面を直焼きして、火炎滅菌が確実です。
危険④ 感染された腸管の上皮細胞はボロボロになり、水下痢を招きます。すぐさま子牛は脱水してしまいます。治療を続けても衰弱が進行し死亡することも多いです。

クリプトスポリジウムは消毒薬の効果がないため、一度牛舎に侵入してしまえば除去するのはほとんど不可能に近いです。治療も基本は子牛の免疫力で病原体を排除できるようになるまで、体力が弱らないように点滴などでサポートするくらいしかできません。病原体の早期排出のために、炭などを飲ませるのも効果的ですが…。

しかしながら、「これをやれば完璧!」という方法はありません。

分娩前の増飼や母体の管理を徹底し、元気で免疫力の強いクリプトに感染しにくい子牛を産ませるしかありません。
非常にやっかいな強敵です。診療の現場では本当に手をやいています。

ちなみに、人間にもうつります!笹崎獣医師はひどい目にあいました(笑)。子牛の下痢に触ったら、手洗いを徹底しましょう。

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