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第189話「子牛の下痢が悩ましい!⑭~なやましき受動免疫移行不全(FPT)~」 |
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2018年6月13日
受動免疫移行不全(Failure of Passive Transfer)とは、文字通り「免疫が子牛に十分に伝わりませんでした」という状態です。
「初乳は飲んでたよ」
子牛が生後7日以内に下痢や発熱を起こしたとき、私たちは初乳が飲めていたかどうかをよく確認します。母乳からの移行抗体がきちんと摂取できていないと、出生直後から病原体に侵されて調子を崩す確率が大きくなるためです。
「初乳のめてなかったかも」というセリフより、上記のようなセリフが返ってきたときの方が危険かもしれません。「初乳が飲めていたなら抗体摂取は問題ないか」という獣医師側の思い込みにつながってしまい、治療方針に悪影響を及ぼす危険性が生じるためです。
その母牛、初産ではないでしょうか。
⇒母乳中の抗体量は産歴があがるほどに増加する傾向があります。初産の場合、乳汁中の抗体量が少ない場合もあるのです。
もしかして初乳って初乳製剤ではなかったでしょうか。
⇒人工物は母牛の自然乳にはかなわないこともあります。初乳製剤だけを給与する場合、2回与えることをおススメします。初乳摂取の理想は生後6時間以内とされますが、それ以降も吸収量がゼロになるまではまだ時間がありますので、子牛の飲みたいサインに合わせて2回目も与えてあげるとよいですね。
子牛の「ミルク飲みたいサイン」がでる前に強制的に飲ませたものではなかったでしょうか。
⇒消化管がまだ動き始めてないときに飲ませても吸収率は悪いです。子牛の体が「よっしゃー!準備できたで、初乳こいーー!!」となるまで待ってあげるのが理想です。
抗体吸収のデッドラインを過ぎてはいなかったでしょうか。
⇒理想はやはり出生後6時間以内に飲んでほしいところです。
など、初乳が飲めたかを確認する際にはこれらの補足情報も重要になってきます。
初乳が飲めたことも大切ですが、抗体が吸収されたことがもっと大切です。
なお、血液中のたんぱく質の量で初乳中の抗体が吸収されたかどうかはすぐわかりますので、不安があればぜひ調べてみてください。
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