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松本大策のコラム
最近の初乳給与のお話し

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2018年4月13日

 みなさん、初乳に関しては耳にたこができるくらい「重要だー!」と聞かされていることと思います。しかしながら、いわゆる「正しい初乳の飲ませ方」というものは、結構時代とともにころころ変わっているので、現場でも混乱を招くことがあります。

 僕が学校で教わった時なんて、生後24時間以内に飲ませる、と習ったものです。しかし、その後研究が進むにつれて、10時間以内と言われてみたり、4時間以内と言われてみたり、と初回給与の時間が次第に短くなってきています。

 しかし、これと相反するように「初乳給与が早すぎると、子牛が飲み込んでいる胎水が、初乳のカード化(消化しやすいように凝固すること。レンネットという酵素の働きで起こります。)が阻害されて、初乳免疫の吸収がよくない。」というお話も耳にします。こんな状況では、いったいどうしたらよいのか迷ってしまいますよね。そこで、少し情報を整理しておきますね。

 まず、初乳中の免疫抗体の含有量の変化ですが、分娩翌日には、当初の1/3に低下してしまうと言うことです(図1)。


図1:初乳成分の変化

 次に、子牛が初乳中の免疫抗体を吸収(ピノサイトーシスという働きです。) 出来る時間ですが、生後6時間で吸収力は半分に低下してしまうと言うことです (図2)。


図2:初乳中免疫の吸収率

 これらのことを考え合わせると、やはり生後4時間以内に飲ませてあげた方が良さそうです。ここで、胎水の問題が出るので、僕は生まれてすぐにきれいな初乳を一口飲ませるようにしています。これは、初乳免疫が目的ではなく、「食べ物」が口に入ることで、胃袋を動かすガストリンや、腸管を動かすセクレチンというホルモンが出てくれるのを期待してのことです。これが出てくれると、たとえ子牛が胎水を飲み込んでいても、胃腸の動きによって「実際に初乳を飲ませるとき」には胎水は第4胃溝に送出されているので、第4胃におけるカード形成を邪魔しないはずです。実際シェパードではそのように指導しています。それに一口初乳を飲ませると子牛の活性が上昇するというのも経験上確認していますしね。

 あとは、余談ですが、岩手大学の岡田先生や宮崎先生、それに海外の研究でも「カード形成の有無は、子牛の健康や血液正常、免疫性に変化をもたらさない」という結果が出ています。それから3年ほど前に出た勉強会では、和牛は生後1時間で起立し2時間で初乳を飲む、ホルスタインは生後2時間で起立し4時間以内に初乳を飲む、というお話しでした。

 僕は、生後すぐにきれいな初乳を一口飲ませて、4時間以内で、子牛の体重の10%程度(個体差もありますからね。子牛と相談です。)を飲ませる、という方法を勧めていますが、それで血中の免疫も子牛の状態もよいようですよ。

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