(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
笹崎直哉のコラム
腸管についていろいろ その2

コラム一覧に戻る

2018年4月10日

 皆様お疲れ様です。4月に入り、血便をする牛さんが老若男女問わずドンドン増えてきました。床替え、消毒、数日の治療で良便になってくれる牛さんもいれば、なかなか薬の効果が表れず、とても悩ましい下痢をしている牛さんも出てきました。桜が散るこの時期は牛さんの腸粘膜上皮も散るころなのでしょうか、偽膜性の腸炎に移行した牛さんにもお目にかかることが増えてきました(泣)。

 さて血液検査でよく注目する項目としてCPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)があります。これは平滑筋、骨格筋、心筋に存在する酵素で、ここに損傷が加わることで血液中に遊出されるので、筋損傷の評価をすることができる項目となります。ここで今回のテーマであります腸について考えていきましょう。

 腸は内臓筋なので、自分の意志では動かすことが出来ない平滑筋というものに分類されます。腸炎でも偽膜を排出するような下痢、便を出すときに力んで背中を丸めるような血便(出血性腸炎)、うんちをした後も尾を挙げたままだったりと腹痛を強くともなう症例の血液検査でCPKが高値を示すことが多く、治療経過や診断の一助になり非常に重要な項目で

治療経過や診断の一助になり非常に助かります。またAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ:別名GOT)という酵素が肝臓実質の障害や筋疾患の指標になる検査項目になるのですが、CPKと異なりASTは内臓筋ではなく自分の意志で動かせる骨格筋とよばれる筋の損傷により上昇します。

 なので牛さんが発情で他の牛に乗られたり、柵に乗ったりしてぶつけたりなどの外傷の際はCPKもASTも同時に上がりますが、腸炎や子宮の炎症の際はCPKだけが高値になっているなんてことがあるのです。

つづく

|