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蓮沼浩のコラム
第504話:獣医師の人数雑感 その3

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2018年1月25日

 先日、会社の健康診断に行ってきました。レントゲンやら心電図、採血をしていただいて最後は内視鏡による胃の検査。鎮静剤を投与してもらい、意識が全くなくなりました。ホント、一瞬で記憶がなくなりました。薬ってすごいですね。牛さんにも鎮静剤を使うことがあるけど、こんな感じに彼らもなっているのかな?起きた後に看護師さんから「物凄くいろいろしゃべっていましたよ~」と言われたのですが、何を話したのか全く覚えていません!

 平成19年5月に農林水産省から「獣医師の需給に関する検討会報告書」というものが発表されています。この報告書の中で、2040年までの獣医師の需給見通しを予測しています。この推計では、2006年の獣医事に従事する総数が31517名で、その後2022年までに緩やかに増加を続け、32,000名前後の獣医師が供給されるという見通しをだしています。2015年の予測値は32,157人とでていますが、1年後の2016年の実際の獣医師の人数は34,536人と2,391人多い状況です。2020年の予測値は32,349人。まだ2020年までは3年ほどありますが、2,187人多い状況です。どうやら予測よりも2,000人ほど多い結果となっています。

 産業動物診療分野の必要獣医師予測に関しては、2015年から2040年まで3,965人~4,180人の間で予測しています。産業動物獣医師の供給見通しは2015年が3,660人でそこから徐々に人数が減少して2040年には3102人と予測しています。

 しかし、実際には産業動物にかかわる獣医師は2016年の時点で4,270人です。2015年の予測の1年後ですが、610人多い結果となっています。こちらも予測よりも多いですね。需要の予測が3,965人~4,180人なので、2016年の時点では90人~305人多い結果です。

 では、予測よりも多いから、産業動物の獣医師は足りているのか?ということに関しては様々な要因があると思うので、現在酒飲んで酔っ払いながらコラムを書いている小生の脳みそではわかりません。ただ、家畜診療の最後に出ている獣医師募集コーナーの募集人数はいつ見ても非常に多いので、足りていないところは間違いなく獣医師が足りていないと思います。産業動物獣医師の需要と供給には地域間格差も相当ありそうですね。

 そして、産業動物獣医師の人数も非常に重要ですが、他にもとっても大事なポイントがあります。それは、農家さんの戸数の急激な減少です。肉用牛のデータで言えば、平成6年には約184,400戸あった農家さんの戸数は平成26年では約57,500戸に激減しています。肉用牛の頭数はこの間、約297万頭から257万頭に約40万頭減少しています。乳用牛や豚もやはり戸数、頭数ともに減少しています。未来のことはもちろんわかりませんが、このような流れの中で今後産業動物獣医師の需要というものが大きく変化していく可能性は当然あると思います。本当に大きな時代の転換点のように思います。

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