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蓮沼浩のコラム
第500話:抗菌薬の投与期間 その1

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2017年12月21日

 出張で北国に来ています。ひえ~~~~~さ、寒い!!手と顔とつま先が痛い!しっかりと防寒対策をして仕事を頑張りたいと思います。
 
 この時期は呼吸器病が非常に多くなってくる季節です。一番注意しなくてはいけない疾病はやはり牛さんの肺炎になります。もちろん、一番大事なことは牛さんを肺炎に罹患させないように飼養衛生管理をしっかりと行い、さらにはワクチンプログラム等で免疫力を上げておくことになります。とにかく牧場は肺炎が出ない管理を目指さなくてはいけません。この点に関しては間違いありません。

 しかし、現実には残念なことに毎日色々な牧場を回って肺炎の治療が無い日はありません。現在は技術が進み、肺炎を発症している牛さんの肺から肺胞洗浄液を回収して、細菌培養を行いさらには薬剤感受性試験や、肺胞内の薬剤濃度の測定まで実施することで様々なことがわかってきています。小生もいろいろ調べたり、検査結果を見たり、治療もいろいろしてきました。そしてふと思うことがあります。

”獣医さんの肺炎治療期間は短いのではないか????”

と、いうことです。ただの風邪や上部気道炎の治療であれば特に問題はありません。しかし、聴診器で肺の音を確認し、明らかな異常音がある場合にためしに内視鏡で肺の中を確認してみると、それはもう内部は相当やられています。とてもじゃないけど、3日の治療で治るような状態ではありません。ヒト様の世界では抗菌薬の投与期間に関してある程度の基準があります。

 肺膿瘍 28日~42日
 緑膿菌 21日
 ブドウ球菌性肺炎 21日~28日
 肺炎で解熱後3~5日は抗生剤の継続投与

小生達獣医師が現場で遭遇する難治性肺炎のかなりのものが、肺の一部に膿瘍を形成していると思います。中途半端な治療ではなく、ヒト様の例を見ても、いくら牛さんといえども、やはり肺炎の治療は初診からある程度の治療期間を覚悟して取り組む必要があるのではないでしょうか。

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