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第112話「アンチバイオテック!②」 |
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2016年11月22日
それではまずはみなさんに身近な「ペニシリン」の作用をみていきましょう。
β(ベータ)ラクタム系抗生物質
抗生物質は世の中にたくさんたくさんありますが、いくつかのグループに分けることができます。
ペニシリンやアンピシリンといった抗生物質は「βラクタム系」というグループに含まれます。抗生物質の中でβラクタム環という構造を有しているものを総じてそう呼びます。
では、なぜβラクタム環をもつ抗生物質は細菌をやっつけてくれるのでしょうか。
細胞壁合成に関わる酵素と類似
細菌のもつ細胞壁は「ペプチドグリカン」という成分で構成されています。
それを作り出すときにPBP(ペニシリン結合タンパク)という酵素が重要になってきます。本来であれば、PBPと「D-アラニル-Dアラニン」という物質がくっついてペプチドグリカンがつくられていきます。
実を言えば・・・
βラクタム系抗生物質の構造がこのD-アラニル-Dアラニンと非常に似ているのです!!
それはそれはもうおす○さんとピ○コさん状態です。
とてもよく似ているのです。
こちらがD-アラニル-Dアラニン
こちらがペニシリン
共通の構造
このように、線で囲んだところがまったく同じなのです。
そして、「D-アラニル-Dアラニンや!!くっついてペプチドグリカンをつくったろ♪」と勘違いしたPBPが抗生物質とくっつきます。ペニシリンとよくくっつくから「ペニシリン結合タンパク」というんですねぇ。
構造は似ていますが、まったく異なる物質です。PBPとペニシリンがくっついたところでペプチドグリカンはつくられません。
結果、細胞壁をつくることができず、細菌の細胞膜をつつむ強固な壁は薄い&もろい状態に。
外部の環境に耐えきれなくなった細胞は「バーン!!!!」と破裂し、死んでしまうのです。
ちなみに、このように細菌をバーン!!と破壊することができる抗生物質を「殺菌的抗生物質」と呼びますよ。
そういえば、ペプチドグリカン(細胞壁)をつくるのをジャマして細菌を倒すってことは、「細胞壁をもつ細菌にしか効果がない」っていうことですよね。
βラクタム系抗生物質は細胞壁をもたない病原体にはまったく意味がない!ということにも注意が必要です。
つづく
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