(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第883話:殺気を感じる力

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2026年7月7日

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先日事務所で仕事をしていると、いつものように農家さんがお薬を買いに来られました。

「Aさんどうも~~、お疲れさまで~す。」

いつもの調子でのんきに声をかけ、ふと顔を見ると、Aさんの表情がまったく違います。非常に険しく、どこか苦しそうです。

ハス「あれ?どうしたんですか~~?」

Aさん「先生~、牛に蹴られた~~。」

この方は人工授精師さんでもあり、まさにベテラン中のベテランです。それでも授精中に思い切り蹴られたそうです。もちろん、その後は何事もなかったかのように人工授精は最後までやり遂げたそうですが、柵をまたぐ時には「あ、これは骨が折れたかもしれない」と思うほど痛かったとのことでした。

実は小生も、このような経験は何度もあります。最近は昔に比べるとおとなしい牛さんが増えてきました。それでも「危険な牛さん」は確実に存在します。皆さんは牛の蹴りと聞くと、どのような蹴りを想像するでしょうか。小生が今でも忘れられないのは、体をぐっと曲げながら繰り出してくる横方向の蹴り、いわば「牛流・回し蹴り」です。

これがまた、とんでもない破壊力なのです。例えるなら、プロの格闘家から内ももに強烈なローキックを食らったようなイメージです。中には「ローキック名人」と呼びたくなるような牛さんまでいました。

ばち~~~~~~ん!!!

と蹴られた瞬間、足が持っていかれ、ひどい時にはそのまま転倒しそうになります。過去に内ももへ強烈な一撃を受けたことがあります。その時にできたアザは、なんと手のひら二枚分ほどの大きさ。しかも蹴られた翌日ではなく、二日ほど経ってから紫ではなくドス黒く変色し始め、完全に消えるまでかなりの時間を要しました。そして蹴られた瞬間の痛みは、「胃袋が口から飛び出るのではないか」と思うほどです。思わずその場で呻きながらうずくまり、声も出せずに悶絶したことを思い出します。

もちろん、これ以外にもいろいろなケガを経験しています。「The3K」の仕事であると痛感いたします。しかし、ここで本当に重要なのは、「蹴られた後の治療」ではありません。

蹴られる前に、その牛さんの『殺気』を感じ取れるかどうかです。

危険な牛さんには共通点があります。近づいただけで体がピクッと反応する。こちらのわずかな動きにも異常に敏感です。そして目を見ると・・・

「来るなら来い!!!」

そんなオーラを全身から発しています。この微妙な雰囲気を感じ取れるかどうかが、安全に仕事を進めるための大きな分かれ道になります。こんな時こそ「急がば回れ」です。無理に進めるのではなく、農家さんと相談しながら保定方法や処置の順番を十分に検討し、お互いが安全に作業できる環境を整えてから臨むことが何より重要です。危険な牛さんであっても、治療をしなければならない場面は必ずあります。だからこそ、人さまも牛さんもできる限り安全な状態で処置を行うことが、小生たちプロの仕事なのだと思います。

ちなみに、今回蹴られた農家さん。
「先生、まだ痛いですよ・・・。今は何とか歩けているけど・・・。」と言っていましたので、次回お会いしたら、ぜひ勲章のようなアザを見せてもらおうと思っています。

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今週の動画
尾椎麻酔とその後の様子~どんなときに必要なのか~

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