(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第881話:自分の牧場を知る

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2026年6月23日

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ここ最近、繁殖農場の往診を回っていると、「経営が厳しい」という言葉を聞く機会が増えてきました。企業畜産でも繁殖部門の縮小や閉鎖の話を耳にするようになっています。

Aさん「蓮沼先生、繁殖を大きくやっていても、いいことなんてないですよ・・・」

ハス「でも、令和4年、5年、6年の地獄の3年間よりはマシじゃないですか?」

Aさん「まあ、あの時よりはマシですけどね。でも厳しいことには変わりありませんよ。もしもあの相場が続いていたら、今ここで先生と話をしていませんよ・・・」

確かに先月中ごろから子牛価格も少し頭打ちの雰囲気が出てきています。一方で肥育農家さんと話をすると、また違った声が聞こえてきます。

Bさん「蓮沼先生~この俺が市場で必死になっても子牛が揃わないんですよ!大変ですよ!!」

ハス「むむむ・・・」

ここ最近、様々な物事が急激に変化してきていることを感じます。
農林水産省が今年3月に公表した令和6年の肉用牛生産費をみると、子牛1頭当たりの全算入生産費は852,345円となり、前年の864,024円から1.4%低下していました。去勢若齢肥育牛も1頭当たり1,375,264円となり、前年より6.3%低下しています。数字だけを見ると少し改善したように見えます。しかし、現場の感覚はそう単純ではありません。

先日ある農家さんがおっしゃっていました。
「令和8年の子牛の全算入生産費は90万円を超えるんじゃないか・・・」
実際、小生もその可能性は十分あると思っています。なぜなら、令和6年の統計はあくまで令和6年の実績です。1年以上前の話です。その後も人件費、資材費、修繕費、医薬品費などはじわじわと上昇を続けています。そして極めつけは今年の2月28日に突如勃発した中東戦争。おいおい、勘弁してくれよ~~。

円安傾向は続いています。財務省が牽制しても、この流れは変わらない雰囲気を感じます。中東情勢も依然として先が見えません。日本の畜産は飼料の多くを海外に依存していますので、世界情勢の影響をもろに受けます。わかっちゃいるけど、もちろん、令和8年の7-9月の飼料価格も上げになります。

ある農家さんは昨年末からずっと、「子牛相場は必ず下がる」と言い続けています。当たるか外れるかはわかりません。しかし、もし相場が下がったとしても耐えられる経営体質を作ることこそが本当に重要なのだと思います。

「技術論ではどうしようもない」

そんな言葉を聞くことがあります。確かに相場や世界情勢は自分ではどうすることもできません。しかし、だからといって何もしないわけにはいきません。では何から始めるのか。小生はまず、自分の牧場の数字を正確に把握することだと思います。

分娩間隔はどうか。
受胎率はどうか。
子牛の事故率はどうか。
飼料費はいくらか。
1頭当たりの利益はいくら残っているのか。

意外なことに、これらを正確に把握できている牧場は決して多くありません。
見たくない数字も出てくるでしょう。いや、ほとんど見たくもない数字でしょう。現実を知ることは苦しい作業です。しかし、現実から目をそらしたままでは改善は始まりません。

相場の予想は誰にもできません。
円安、そしてインフレの流れも止められません。
戦争も止められません。

しかし、自分の牧場の数字を見ることは今日からできます。これから先、大きな波が来るのか来ないのか。それは誰にもわかりません。だからこそ今、自分の牧場の足元をしっかり見つめること。それがこれからの時代を生き抜くための第一歩なのだと思います。

偉そうなことを書いていますが、実は獣医さんや関係各所の方々も同じです。結局は自分たちの現状をしっかりと把握し、方向性を定め、粛々と真面目に取り組んでいく。身もふたもない話ですが、そのように思っています。

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